第50会期国連人権理事会が6月13日から7月8日まで開催され、第50回目を記念するハイレベル記念会合が開催されるとともに、ミャンマーのロヒンギャの人権、アフガニスタンの女性と少女に関する決議などが採択されました。
会期の初日、バチェレ国連人権高等弁務官が、世界の人権状況について報告を行い、世界的な食料、燃料と金融危機によって多くの人が貧困と飢餓に陥ろうとしていること、そのような緊急事態への対応として短期的な対処法をとるのではなく、危機を引き起こす状況への対応に資金を投入していかなければならないと述べました。
そして、現在の問題への対応の方向として、不平等と差別への取り組み、新型コロナのパンデミックにおいて各国が行った支援によってその有用性が明らかになったように社会的保護を強化する際、人権の視点を取り入れること、国際協力と連帯強化をあげました。そして、危機時のレジリエンス(困難な状況を克服する適応力、復元力、あるいは回復力)を向上させる最も重要な要素として、市民が活動し参加する場を強化することを指摘しました。人権高等弁務官はまた、アフガニスタンと中国への訪問について報告しました。
第50回記念ハイレベル会合
人権理事会は、2006年に国連総会で設立が決議され、同年3月に第1会期が開催されました。今会期、第50回を記念するハイレベル会合が6月15日に開催され、オープニングには、第76回国連総会議長、グテーレス国連事務総長のビデオ・メッセージ、バチェレ人権高等弁務官の基調発言に続いて、「5月広場の祖母たち」のカルロット代表がビデオでスピーチを行いました。「5月広場の祖母たち」は、アルゼンチンの軍事政権下の人権侵害に対して国内で抗議するだけでなく、その人権侵害を人権理事会の前身である人権委員会に訴える活動を行っていました。カルロットさんは、その時の経験、その後強制失踪条約の締結に取り組むなど市民社会と国連の人権システムの関わりについて述べました。
ミャンマーの状況
人権理事会は、ミャンマーの人権状況についての対話と、ロヒンギャの人々に対する人権侵害に関するパネル・ディスカッションを開催し、ミャンマーのロヒンギャ・ムスリムと他のマイノリティの人権状況に関する決議を採択しました。決議は、それまでの人権高等弁務官、事実調査委員会や特別報告者などの特別手続きによるロヒンギャや他のマイノリティの人権状況に関する報告に感謝し、ミャンマー内で、特にロヒンギャや他のマイノリティに対する恣意的拘禁、殺害、強制労働、家屋などの破壊を含む人権侵害に対して深刻な懸念を表明し、ミャンマー政府に対し、敵対行為や人権侵害を直ちに停止し、ミャンマーのすべての人の人権と尊厳を守る措置をとるよう呼びかけました。また、無国籍状態をなくすために真剣に努力し、民族的、宗教的マイノリティに対する制度的差別を撤廃することなどを求めています。
アフガニスタンの女性および少女
人権理事会は7月1日、アフガニスタンの女性および少女の人権状況に関する緊急討議を行い、バチェレ人権高等弁務官とベネット・アフガニスタンの人権状況に関する特別報告者が、同国において、女性の中等教育が再開されず停止されたままであることをはじめ、女性および少女が次第に公の場から排除されていると報告しました。人権理事会はアフガニスタンのすべての女性および少女と子どもがあらゆる人権を平等で十分に享有できるよう揺るぎなくコミットすることを再確認し、同国の女性と少女の移動の自由、教育の権利、リプロダクティブ・ヘルスを含む健康の権利、労働の権利、司法へのアクセスを含む人権の尊重、同国の女性の権利のための組織や、女性が率いる組織が女性と少女の支援を続けることを確保する措置を決議しました。また、決議ではパリ原則に沿ったアフガニスタン独立人権委員会の復活、または同様の独立した機関の設置を求めています。
民間人の銃の取得、所有と使用
人権理事会は、民間人の銃へのアクセスの増加、子どもや若者にも銃を取得し、犯罪に使用することが見られること、また、学校、宗教施設や他の公共の場での銃撃事件などを懸念し、人権と民間人の銃の取得、所有と使用の規制に関する決議を採択しました。
決議はまた、世界で毎年何十万もの人が銃により生命を失い、または負傷し、長期にわたって影響を受けることに深い懸念を表明し、各国に銃が関連する暴力の根本原因やリスク要因に対応する国際人権法など国際法や憲法に沿って、すべての人の人権の保護と享有を強化する目的で、民間人の銃の取得、所有と使用による人権への影響を低減させる適切な立法や措置をとることを求めています。また、各国に銃の製造会社や販売業者に対して「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいて、人権への影響の回避、人権侵害の防止などの要件を課すことを検討するよう呼びかけました。
特別報告者の任期延長
人権理事会は、「性的指向と性自認に基づく暴力と差別からの保護に関する独立専門家」について、各国に性的指向と性自認に基づいて差別する法律や政策を廃止または改正し、オンラインかオフラインに関わらず、性的指向と性自認に基づく暴力や差別を防止し、捜査し、起訴するための有効な措置をとることを求め、同専門家の任期を3年延長することを決議しました。決議は投票の結果、賛成23、反対17、棄権7で採択されました。同専門家の任期について、日本を含め世界各地の1,000を越えるNGOが延長に向けてキャンペーンを行っていました。
また、「国内避難民の人権に関する特別報告者」、「女性と少女に対する暴力、その原因と結果に関する特別報告者」の任期も延長されました。
「国内避難民の人権に関する特別報告者」は、2022年9月26日〜10月7日まで、東京電力福島第一原発事故による避難者の状況などを調査するため、日本を公式訪問する予定です。
人権理事会はそのほか平和的な抗議行動の文脈における人権の促進と保護、すべての人の健康の権利の文脈における、医薬品やワクチンなどへのアクセスなどについて決議を採択しました。
(構成・岡田仁子)
<出典>
https://www.ohchr.org/en/press-releases/2022/07/human-rights-council-concludes-fiftieth-regular-session-after-adopting-23?sub-site=HRC
Human Rights Council Concludes Fiftieth Regular Session after Adopting 23 Resolutions and One Decision、8 July 2020, OHCHR
<参照>
https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section1/2022/06/apf519.html
アジア・太平洋国内人権機関フォーラム(APF)が、タリバン政権によるアフガニスタン独立人権委員会解散という最近の決定を強く非難(5/19)ヒューライツ大阪
(2022年07月20日 掲載)