ミャンマー問題に関するノエリーン・ヘイザー国連特使は8月中旬、2021年10月の就任以来初めてミャンマーを訪問しました。
ヘイザー特使の訪問は、ミャンマーでの暴力や人道的アクセスに対する妨害を終焉させることを目的とした安全保障理事会の要請に次ぐものです。
国連によると、シンガポール出身の女性の人権活動家であるヘイザー特使の任務は、悪化するミャンマーでの状況の改善を訴えることです。通信各社は、ヘイザー特使が8月16日午後に首都ネピドーに到着したことを報道しました。
混沌状態が続くミャンマー
2021年初頭、ノーベル平和賞受賞者アウンサンスーチー氏が導く民主政府を国軍がクーデターで転覆させ、抗議活動に対して残虐な弾圧を行って以来、ミャンマー国内は混沌としてます。
国軍指導者たちは2021年4月、暴力行為の即時停止などミャンマーに平和と安定をもたらすことを目的とした東南アジア諸国連合（ASEAN）の5項目のコンセンサスに合意したにも関わらず、ミャンマーはそれらを実施させるための努力を行っていません。
以来、ミャンマーは内戦とも呼べる状況に突入しています。
平和への努力
東南アジア内のミャンマー近隣諸国による平和を取り戻そうとする努力は、ミャンマーで民主化運動に取り組んだ2人を含む4人の政治活動家の死刑が執行されたことによって妨げられました。
友好関係にある中国とロシアを含む安保理も、4人に対する死刑執行を非難しました。
8月上旬のメディア報道によると、ASEANにおけるミャンマーへの特使でもあるカンボジアのプラック・ソコン外務大臣は、もしまた死刑執行が行われるならば、ASEANの今後のミャンマーとの関係を再考せざるを得ないことになろう、と警告しました。
人道に対する罪
国連のミャンマーに関する独立調査メカニズムは、8月上旬に発表された年次報告で、人道に対する罪が行われている証拠が増えつつあることを報告しました。報道によると、クーデター以降、2,100人以上の市民が殺され、15,000人近くが逮捕されています。
ヘイザー特使の訪問は、軍事政権下の裁判所が元指導者であるアウンサンスーチー氏に更に4つの汚職の容疑に対して有罪判決を言い渡し、以前からの11年の刑期に、6年の禁固刑が加えられた翌日というタイミングでした。
国連が長らく要請していた、ヘイザー特使によるミャンマーの軍事指導者や、アウンサンスーチー氏との面会が行われたかどうかについての詳細情報は国連は未確認です。
（※訳注：後日、ミンアウンフライ司令官との会談が行われたこと、一方でアウンサンスーチー氏との面会は許可されなかったことが判明しています）
初訪問
今回の国連特使の訪問は政治分野の様々な関係者、および市民社会や紛争によって影響を受けているコミュニティとの綿密な協議を経て実現しました。
ヘイザー特使は1994年から2007年まで、女性の経済的地位向上の促進に取り組む国連女性開発基金（UNIFEM）の事務局長、2007年から2014年には女性として初めての国連アジア太平洋経済社会委員会（ESCAP）の事務局長を務めていました。
（※訳注：訪問を受けて、イギリスを拠点とするNGOのBurma Campaign UKはヘイザー特使の訪問は実質的な効果を何も発揮しなかったどころか、かえって国軍の指導者を認めるような形になってしまったと批判し、ミャンマー国連特使のポストの廃止を求める声明を発表しています）
（訳：細川由結・ヒューライツ大阪インターン）
＜出典＞
https://news.un.org/en/story/2022/08/1124762
Amidst military rule, UN envoy travels to Myanmar for first time (16 August 2022)
https://burmacampaign.org.uk/un-myanmar-special-envoy-post-should-be-withdrawn-un-secretary-general-must-take-lead/
UN Myanmar special envoy post should be withdrawn - UN secretary general must take lead (18 August 2022 Burma Campaign UK)
＜参照＞
https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/04/3eb7ac03b8129ca6.html
ASEAN首脳級会議を開催、ミャンマーへの特使派遣など5項目を発表
（2021年04月27日 JETRO）
https://news.un.org/en/story/2022/08/1124302
Myanmar: Crimes against humanity committed systematically, says UN report (9 August 2022)
（2022年08月24日 掲載）