平野 裕二(ひらの ゆうじ)
ARC = Action for the Rights of Children
フィリピン教育省は6月27日、「子どもの権利政策:フィリピンの基礎教育における権利を基盤とする教育(Rights-Based Education)の枠組みの採用」(以下「RBE枠組み」)と題する省令を発出しました。
RBE枠組みは、「すべての子どもの教育に対する権利および教育における権利を尊重し、保護し、充足しかつ促進する義務に関して教育省その他の関係者に対して指針を示す」ことを目的とするものです(パラ1、太字の部分は原文ではイタリック)。幼稚園~中等教育修了までの基礎教育学校のほか、地域学習センターその他の学習施設にも適用されます。
RBE枠組みは、「子どもが権利を有する人格であり、自己の教育ならびにその立案、発展および運営への主体的参加者であって、教育サービスを受動的に受けるだけの存在ではないこと」を認め(パラ4)、基礎教育の現場で「子どもの権利アプローチ」(child rights approach)を推進していこうとするものです(添付文書パラ36)。そこでは、1987年憲法その他の国内法令のほか、社会権規約・自由権規約・子どもの権利条約などの国連人権条約も指針とされています(同パラ37)。
RBE枠組みには次の3つの側面があるとされます(添付文書パラ42)。
a. 教育にアクセスする権利:子ども時代のあらゆる段階およびそれ以降の期間全体を通じた教育(生涯学習)/教育の利用可能性・アクセス可能性/機会均等
b. 良質な教育への権利:幅広く、関連性があり、包摂的なカリキュラム/権利を基盤とする学習および評価/適切かつ良質な学習リソース
c. 学習環境における尊重およびウェルビーイングへの権利:アイデンティティの尊重/参加に対する権利/子どもにやさしく、安全かつ健康的な学習環境における心身の不可侵性に対する権利
とくに、cの「アイデンティティの尊重」との関連では、「とくに文化、宗教、民族、性的指向、ジェンダーアイデンティティおよびジェンダーの表出」のような子どものアイデンティティは尊重されるべきであること、「学校は、子どもにとって、ジェンダー、文化、宗教その他の属性に基づく差別およびハラスメントを受けない安全な場所であるべきである」ことが強調されています。
〈出典〉
https://www.deped.gov.ph/wp-content/uploads/2022/06/DO_s2022_031.pdf
Child Rights Policy: Adopting the Rights-Based Education Framework in Philippine Basic Education、DO_s2022_031 (Department of Education of the Government of the Philippines, 27 June 2022, PDF)
〈参照〉
https://note.com/childrights/n/nbaea1b78f176
フィリピン教育省、「権利を基盤とする教育」の推進を通達(平野裕二 note、2022年8月4日)
https://www.pressenza.com/2022/07/philippines-adopts-rights-based-education/
Philippines adopts rights-based education (Pressenza, 24 July 2022)
(2022年08月26日 掲載)