外務省は9月9日、政府の開発協力政策の基本方針を示す「開発協力大綱」について、2015年の策定時からの大きな情勢の変化を踏まえ改定すると発表しました。そして、改定に向けた検討を進めるため、「有識者懇談会」を設置し、第1回会合を9月16日に開催することを明らかにしました。9月から11月にかけて4回の会合が予定されており、2023年前半をめどに新大綱を策定するとしています。
9月9日の発表を受けて、メコン・ウォッチ、FoE Japan、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)は9月15日、外務省に対して、①ODA(政府開発援助)事業の検証を行い、それに基づく議論を行うこと、②透明性を確保した上で、多様な意見を反映するプロセスを確保することを求める要請書を提出しました。要請書には、ヒューライツ大阪を含む17のNGOが賛同しました。
要請書は、日本のODAなど公的資金が2021年2月にクーデターを起こしたミャンマー国軍の資金源になっている可能性を追及してきたものの、政府は調査や評価を行っておらず、国軍への資金源を断つという明確な立場を明らかにしていないことをとりわけ問題視しています。
そして、ミャンマーへのODAをはじめ、ODAが現地政府などによる市民への弾圧の資金源になっていることが疑われるケース、環境破壊や人権侵害を引き起こしている可能性があるケースなどについて、十分な時間をかけた検証を行うべきであると訴えています。
要請書はまた、「有識者懇談会」での議論が改定に関してどのような影響をもつのか明らかにするよう求めています。市民社会が懇談会の議論の内容を知ることができるよう、透明性が確保されなくてはならないとし、会合は公開で行い、議事録や資料を公開すべきだとしています。さらに、「有識者懇談会」の構成は、NGOから1名のみであるため、学識者や経済界から各3名という人数と比べ、明らかにバランスを欠くものだと述べています。
政府は2015年2月10日、ODAの基本方針を示した従来からのODA大綱に代わる「開発協力大綱」を策定しました。現大綱の大きな特徴は、他国軍への支援を「非軍事の分野に限って解禁」し、経済発展してODAの対象ではなくなった「卒業国」への支援制限を撤廃したことです。日本の安全保障や経済・外交上の「国益」につながる支援を重視する方針を鮮明にし、それまでのODA大綱に基づく政策を転換させました。
<出典>
http://www.mekongwatch.org/PDF/rq_20220915.pdf
「開発協力大綱」の改定プロセスに関する要請書(メコン・ウォッチ)
https://foejapan.org/issue/20220915/9264/
「開発協力大綱」の改定プロセスに関して、要請書を提出-ODAの検証と市民社会の参加確保を(国際環境NGO FoE Japan)
<参考>
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press6_001245.html
開発協力大綱の改定(外務省、2022年9月9日)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press1_001052.html
「開発協力大綱の改定に関する有識者懇談会」第1回会合の開催(結果)
(外務省、2022年9月16日)
https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section1/2015/02/oda-.html
新開発協力大綱は、「非軍事のODA原則」を貫くことができるのか?-「国益」が前面に出た新大綱(ヒューライツ大阪、2015年2月)
(2022年09月21日 掲載)