国連自由権規約委員会(HRC)は10月14日、ジュネーブ時間の午前10時から午後1時まで日本政府代表団と対面による質疑応答を行い、2日間の政府報告審査の日程を終えました。懸念や勧告が盛り込まれる総括所見の採択は10月28日に予定されており、会期末前日の11月3日に開かれる同委員会の記者会見で他の対象国の総括所見とともに公表されたうえで、委員会のウェブサイトに掲載される見込みです。
午前10時から始まった審査の冒頭約20分間は、委員による前日終盤のフォローアップ質問に対して時間の制約で回答しきれなかった16問について、政府代表団が答えました。日付をはさみ日本の本庁に照会した課題も多くあったといいます。
特筆すべきは、政府から独立した人権救済のための国内人権機関に関する回答でした。「国内人権機関の設立のための法案が最後に国会に提出されてから長年たっているが、その後の具体的な検討について知りたい」という質問への回答は、「日本は成文法の国である。人権のテーマごとに詳細な法律を整備している。個別の人権課題は個別法で改善を見定めている」というものでした。これまで、政府は各人権条約の委員会をはじめ国連機関により国内人権機関の設置に関する勧告が繰り返されるたびに、「検討している」と答えてきましたが、今回の説明は「個別法で事足りる」として、もはや検討していないかのように受け取れる内容でした。
政府からの回答がひと通り終わると、前日と同じ5人の委員がそれぞれ、「質問リスト」の16から30にあげられている課題のうちそれぞれ数課題ずつをていねいにとりあげて政府代表団に説明を求めました。具体的には、代用監獄、「慰安婦」問題、技能実習制度、庇護希望者の処遇と入管収容問題、プライバシーの権利(ムスリムに対する無差別な監視と情報収集活動)、思想・信条・表現の自由、永住外国人の地方参政権、朝鮮学校の高校無償化除外問題、高齢・障害のある在日コリアンの無年金問題、アイヌおよび琉球・沖縄のコミュニティの伝統的な土地や天然資源に対する権利などでした。
政府の説明を受けて、委員たちからさらに質問が出されたものの、終了時刻となったことから、ポティーニ・パザルツィス議長が政府代表団に48時間以内に委員会に回答送付するよう求めました。
議長は閉会の挨拶のなかで、2日間の審査を振り返り、委員会への個人通報制度を定めた自由権規約の第一選択議定書の締結、および第二選択議定書が定める死刑廃止について、日本政府に対して真剣に検討するようにと述べました。また、包括的な差別禁止法の整備の必要性や、移民女性の人権をめぐる課題にも言及しました。
報告:藤本伸樹/ジュネーブ
<参考>
https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section4/2022/10/11013.html
国連自由権規約委員会、日本報告審査を開催(第1日目・10月13日)
https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section4/2022/10/7ngo1010.html
自由権規約の第7回日本政府報告審査に先立ちジュネーブでNGOブリーフィング開催(10/10)
(2022年10月15日 掲載)