国連自由権規約委員会(HRC)は10月13日、ジュネーブで自由権規約(市民的及び政治的権利に関する国際規約)の実施状況に関する第7回日本政府報告審査を2日間の日程で開始しました。第6回報告の審査が行われた2014年以来8年ぶりのこと。
審査を前にした午前中、10月10日の「NGOブリーフィング」で時間切れとなり報告できなかった8団体により委員への情報提供が行われました。「表現の自由と開かれた情報のためのNGO連合」(NCFOJ)など6団体が対面で、2団体がオンラインで数分間ずつ報告しました。
午後3時から6時(ジュネーブ時間)まで行われた初日の審査には、外務省総合外交政策局の今福孝男参事官のもと法務省や厚労省、警察庁など関係省庁の担当者約35名からなる日本政府代表団は、委員たちとの対話に臨みました。在ジュネーブ国際機関日本政府代表部の本清耕造大使・次席常駐代表の冒頭挨拶のあと、今福参事官が、①ジェンダー平等、②マイノリティの権利、③刑法、刑事訴訟法の改正、④技能実習制度、⑤難民および入管収容など自由権規約に関連する日本の主な人権施策の取り組みについて報告しました。
報告を受けて、議長を含む18人の委員のうち、5人の委員が、委員会により2017年12月にまとめられ公表されている30項目からなる「質問リスト」のうち、1から15までのなかから複数の関心事項を選んで、現時点での施策の進捗状況について質問およびコメントを投げかけました。
質問は、他の条約委員会でも必ずとりあげられるパリ原則に準拠した国内人権機関および個人通報制度、包括的な差別禁止などの設立や整備の進捗状況に関する課題をはじめ、死刑制度を廃止しない理由、LGBTQの人々の権利保障、マイノリティに対するヘイト扇動の処罰法や被害者救済の不在に関してなどでした。
また、9 月26日から10月7日にかけて「国内避難民(IDPs)人権に関する特別報告者」のダマリー氏が訪日調査を行った結果を受けて、福島第一原発の事故により、避難を余儀なくされた人々の人権状況に関して質問が出ました。また、女性に対する暴力に関連し、名古屋入管で亡くなったウィシュマ・サンダマリさんについて、DV被害を訴えていたにもかかわらす被害者として扱われなかったとし、移民女性をはじめマイノリティ女性への暴力からの保護と問う質問がありました。
さらに、質問リストにはとりあげられていないものの、審査の前から多くの市民団体から寄せられた、「児童相談所が子どもを親から引き離し、裁判所の命令なしに長期間子どもを留め置いている」といった問題に関するレポートや「NGOブリーフィング」でのプレゼンを受けて、今回委員たちの関心を呼んでいます。
委員たちの質問のあと、日本政府代表団からそれぞれ回答が行われましたが、大半は日本から準備してきた文書を読みあげるにとどまりました。回答に満足できない委員たちは矢継ぎ早にフォローアップの質問を試みましたが、終了予定時刻となったので閉会しました。
2日目は14日午前10時から午後1時(日本時間17時から20時)までです。
藤本伸樹/ジュネーブ
<参考>
https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/kokusai/humanrights_library/treaty/data/Alt_Rep_JPRep7_ICCPR_ja171211.pdf
自由権規約委員会 第7回日本政府定期報告に関する事前質問リスト(日弁連仮訳)
https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section4/2022/10/7ngo1010.html
自由権規約の第7回日本政府報告審査に先立ちジュネーブでNGOブリーフィング開催(10/10)ヒューライツ大阪
<動画リンク>
日本審査のリンク(外務省による同時通訳が提供されています)
https://media.un.org/en/asset/k1k/k1kavs367g?
(2022年10月14日 掲載)