外務省は4月5日、政府開発援助(ODA)の指針となる「開発協力大綱」の改定案を公表しました。開発協力大綱は2015年、それまでの「ODA大綱」を改定する形で策定され、8年ぶりの見直しとなります。
新大綱案は、2022年9月から、有識者や市民社会、経済界などから意見を聴取し、政府が作成したもので、4月5日から5月4日まで意見募集(パブリックコメント)を行い、早ければ5月中に閣議決定される見通しです。
新大綱案は、その趣旨・背景として、2022年12月に策定された「国家安全保障戦略」も踏まえ、我が国の外交の最も重要なツールの一つである開発協力を一層効果的・戦略的に活用すると明記しています。具体的には、覇権主義的動きを強める中国を念頭に、法の支配に基づく「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)の実現に向け開発協力を戦略的に活用することなどをあげています。
また、これまでは被援助国からの要望を受けて支援する「要請主義」だったのが、改定案では、日本が自らの強みを生かして支援メニューを作成して提案する「オファー型協力」を強化するとしています。
さらに、「非軍事協力」を掲げながら、海上保安能力の向上を始めとする法執行機関の能力強化、テロ・海賊対策等の海洋安全保障を含む、社会の安全・安定の確保のための支援を行うとしています。
そうしたなか、市民社会組織から、一人ひとりが安心して幸福に生きられる社会をつくろうとする「人間の安全保障」の観点が弱まり、日本の「国益」をこれまで以上に重視する方向へ開発協力が進むのではないか、ODAが軍事転用されるのではないか、など多くの懸念の声があがっています。
<参照>
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/about/kaikaku/taikou_kaitei.html
開発協力大綱の改定(外務省)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press1_001407.html
開発協力大綱案についての意見募集(外務省、2023年4月5日
(2023年04月13日 掲載)