2022年2月、EUの政策執行機関である欧州委員会が「企業の持続可能性に関するデュー・ディリジェンス指令案(以下、指令案)」を公表しました。この指令案は、企業が事業活動を通じて人権や環境に与える負の影響を特定し、防止・軽減、是正することを義務化するもので、デュー・ディリジェンスと呼ばれる仕組みの構築と実行を企業に求めています。欧州連合(EU)の加盟国の多くがすでにデュー・ディリジェンスに関する国内規制を導入しており、一部の企業は自主的に対策をとっていますが、対応は十分ではなく、欧州全体での大規模な取り組みが期待されています。指令案は、欧州議会とEU理事会での採択を経て施行となり、その後、EU加盟国で法制化されることになります。
市民社会や労働組合は、この指令案には大きな抜け穴があると指摘しています。人権侵害は大企業のサプライチェーンの上流や、事業、製品・サービスを通じてつながる取引先で起きているにもかかわらず、指令案では企業のデュー・ディリジェンスの範囲を、「確立されたビジネス関係(取引が直接的か間接的かを問わず、継続的な事業関係であること)」としています。これにより、大元の大企業の責任を問うことが難しくなるケースが考えられます。また、指令案は気候危機に多大な影響を及ぼしている企業にCO2排出削減を義務付けておらず、それを怠った場合の責任も問わないとしています。
企業に対するより強力な法的拘束力を求めて、欧州を中心とした市民社会や労働組合100団体が2022年9月に「正義はみんなの自分ごと(Justice is Everybody's Business)」キャンペーンを発足しました。このキャンペーンは、欧州憲法人権センター(ECCHR)やFoEヨーロッパが主導しており、アムネスティ・インターナショナル、ビジネスと人権リソースセンター、グローバル・ウィットネス、ヒューマン・ライツ・ウォッチ等の市民社会組織、インダストリオール・グローバルユニオン等の労働組合が参加しています。このキャンペーンでは、指令案に対して10の要請を行っています。
「正義はみんなの自分ごと」キャンペーンが指令案に求める10の要請
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(2023年04月14日 掲載)