世界人権宣言75周年を記念して国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が2023年にスタートした「ヒューマンライツ75」イニシアティブでは、具体的かつ緊急な行動を必要とする人権問題を「テーマ別スポットライト」として毎月取り上げています。4月は人と地球を中心に据えた「ヒューマンライツ・エコノミー(人権を基盤とする経済)」がテーマとなりました。以下はその概要です。
フォルカー・テュルク人権高等弁務官によれば、「ヒューマンライツ・エコノミー」とは、「経済的・社会的・文化的権利(社会権)への投資を優先することにより、平等、正義、持続可能性をはばむ根本原因や構造的な障壁を是正する」ことを目指すものです。
気候変動や紛争などに起因する食料不足や物価の高騰は、世界中の何億もの人々に影響を与えています。現在、8億2,800万人が栄養不足に陥っており、その人数はこの3年間で1億5,000万人も増加し、そうした人々が多く住む低所得国の60%、新興国の30%が債務超過、あるいはそれに近い状態にあるとテュルク人権高等弁務官が指摘しています。
こうした危機が、医療・保健や教育にアクセスする権利、社会保障を受ける権利などの人権を保護する義務を国が果たすことを難しくしており、女性など社会的に脆弱な立場に置かれている人々に最も大きな影響を与えています。その背景には、多国間、地域間、国内の経済・政治システムが、予算や投資の決定において、国の人権保護義務や国際人権基準の考え方を適切に組み込んでいないことがあります。
格差の拡大は、SDGsの目標や「誰一人取り残さない」という基本理念の達成に対する大きな障害であり、人権を中心に据えた経済・政治システムを構築していくことが求められています。
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(2023年05月31日 掲載)