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世界人権宣言75周年を機に発足した国連「ヒューマンライツ75」イニシアティブ

 1948年12月10日に国連総会で世界人権宣言が採択されてから75年となる2023年、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が「ヒューマンライツ75」イニシアティブをスタートしました。このイニシアティブは、世界人権宣言が掲げているすべての人に自由・平等・正義をもたらすという誓約を実現させるため、変化する時代のニーズに合わせながら、世界人権宣言を活性化していくことを目的としています。
 世界人権宣言は、人権を世界中どこでも通用する普遍的なものにするという合意のもと、法的・文化的背景を持つさまざまな国の専門家によって起草され、1948年12月10日に国連総会で採択されました。若干の棄権(8か国)はあったものの当時の加盟国の圧倒的な賛同(48か国)によって決議された世界人権宣言は、すべての人々と国が達成すべき共通の基準として、世界で広く受け入れられてきました。採択から75年のあいだに、人権に対する認識が広まり、障害者や先住民族、移民などの脆弱な立場に置かれやすい人々の権利を含めた人権の保障が拡大する中で、世界人権宣言は世界中の人権保護システムの基盤となっています。
 世界人権宣言の30の条文には、思想・良心・宗教の自由や意見・表現の自由、法の下の平等、差別の禁止、奴隷からの自由、集会・結社の自由、プライバシーの保護を受ける権利などの自由権、自由で望ましい条件での労働や健康・福祉・十分な生活水準に対する権利、教育を受ける権利といった社会権などが含まれており、人権は、すべての人が、いつでも、どこでも、同じように持つものであり、平等に、そして無条件に尊重されるものであるという、人権の普遍性や平等性の考え方をこの宣言が明らかにしています。しかし、こうした権利を享受している人々がいる一方で、手が届いていない人々が大勢います。
 すべての人の尊厳と平等という世界人権宣言の理念は、感染症によるパンデミック・紛争・格差の拡大・人種差別・気候変動などにより、危機に陥っています。こうしたグローバル課題による人権への影響はこれまでも指摘されてきましたが、さらに問題が先鋭化する中、世界人権宣言が示す理念と権利は、誰一人取り残さないというわたしたちの連帯のための行動の道しるべとなるものです。
 「ヒューマンライツ75」イニシアティブでは、OHCHRのリーダーシップのもと、国連加盟国および関連するアクターと連携し、ビジネスセクターやユース、国連機関との協議・対話などを進めていきます。2023年12月開催のハイレベルイベントでは、国・地域ごとの対話、テーマ別の協議、他セクターからの提言などの集大成として、次の25年に向けたビジョンが発表される予定です。また、人権保護義務を持つ国家や人権尊重責任を持つ企業・組織などによる具体的かつ緊急な行動を必要としている人権問題が「テーマ別スポットライト」として以下のとおり毎月取り上げられます。

  • 1月:人権のために声を上げる活動家やジャーナリストなどの不当な拘束
  • 2月:ケアの担い手と受け手の権利をベースとしたケアやサポートのシステム
  • 3月:人種差別に対抗する「レイシャル・ジャスティス(人種に関する正義)
  • 4月:人と地球を中心に据えた「ヒューマンライツ・エコノミー(人権を基盤とする経済)」
  • 5月:オンライン・オフラインで声を上げる市民や人権活動家の保護
  • 6月:女性の権利
  • 7月:紛争や危機への予防的対応と平和構築
  • 8月:司法を含む正義の課題
  • 9月:SDGsと社会保障
  • 10月:ビジネスと人権
  • 11月:気候変動と環境
  • 12月:人権教育

※ 6月以降のテーマの詳細についてはウェブページで未掲載となっています。

<参照>

<参考>

(2023年05月31日 掲載)