4月28日、国内初となる経口中絶薬「メフィーゴパック」が承認されました。
「メフィーゴパック」は英製薬会社ラインファーマにより開発されたもので、妊娠継続に必要な黄体ホルモンのはたらきを抑える「ミフェプリストン」と、子宮収縮作用を有する「ミソプロストール」を組み合わせて使う、いわゆる「コンビ薬」です。今回の承認では妊娠9週までの妊婦が対象とされています。WHOも安全な中絶法として推奨している方法で、手術より身体的負担が少ない選択肢が増えることになります。
中絶薬に関しては、2023年1月の時点で、厚労省の専門部会で薬事承認が了承されています。しかし厚労省は、「社会的な関心が高く、慎重な審議が必要」として、2月の1ヶ月間、専門部会で承認が取れた事案であるにもかかわらず異例のパブリックコメントを募集しました。市民団体などの呼びかけもあり、パブリックコメントの募集に対し、厚労省の発表ではおよそ1万2000件の意見が集まり、承認賛成派が反対派の2倍にのぼったといいます。
これに対し、3月17日に開催された自民党の厚生労働部会「薬事に関する小委員会」においては、「普段は顔を見せない保守系議員らが殺到し「反対」の大合唱と繰り広げる事態となった」と医薬経済社RISFAXが伝えています。そのようなこともあってか、3月24日、薬事分科会において最終的な審議がされるはずでしたがパブリックコメントの「分析や対応の整理に予想以上に時間を要している」として、分科会は延期とされていました。
その後、4月21日に薬事分科会での最終審議を経て、ようやく承認が実現しました。
しかし、その運用方法について懸念が上がっています。NHKによれば、日本産婦人科医会は、「薬の価格はおよそ5万円とみられ、診察料などと合わせると、10万円程度になることが予想される」としています。さらに、WHOは2022年に発行したガイドラインの中で、中絶薬について「正確な情報と品質が保証された薬が供給されれば、施設外(例えば自宅など)でも自分自身で服用することができます」としており、12週未満での薬剤による中絶の自己管理や遠隔医療アプローチも推奨され始めています。しかし日本では、医療機関に入院しての投与か、外来の診療で投与した後に数時間程度は院内での待機が全件で必須となる見込みです。
国際的基準と科学的根拠に則り、かつ、より脆弱な立場に置かれた人にもアクセスが保障されるよう、引き続き注視が必要です。
福田 和子(ふくだかずこ)
参考:
中絶薬については、『国際人権ひろば』 No.166(2022年11月発行号) 特集『「性と生殖に関する健康と権利」と中絶』において、中絶問題研究家の塚原久美さんが「進化してきた世界の中絶とこれから変わるべき日本の中絶」を執筆。
ラインファーマ株式会社
https://www.linepharma.co.jp/news_detail.php?id=2
NHK「「経口中絶薬」 厚労省の分科会が了承 国内初の承認へ」https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230421/k10014045661000.html
(2023年06月22日 掲載)