UPR(普遍的・定期的審査)は2006年の国連人権理事会の創設に伴って新たに作られた制度であり、約4年半に一度のペースで、国連加盟国193カ国すべての国の人権状況が審査される。第4回審査(2023年1月31日)では第3回審査で出された217の勧告を大きく上回る300の勧告が出された[1]。 その勧告に対する日本政府の回答結果文書が7月10日、国連人権理事会で採択された。 勧告に対する回答は4つに分類される。以下、分類とその対象となる勧告の数である。
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*本稿では、「フォローアップすることを受け入れる」、「部分的にフォローアップすることを受け入れる」と表明した主要な勧告の内容、およびそこから浮かび上がる日本政府の対応姿勢を紹介します。「留意する」、「受け入れない」とした勧告については後日掲載します。
フォローアップすることを受け入れた主要勧告
その他、子どもの権利に関わる勧告、移民や難民・庇護希望者の権利保護に関わる勧告などについても、そのほとんどについてフォローアップすることを受け入れたものの、入管収容施設における無期限長期収容や施設内における医療体制の改善を求める勧告については「部分的にフォローアップすることを受け入れる」とし、政府は既に収容期間の最小化に取り組んでいると回答している。
傾向と特徴
「フォローアップすることを受け入れる」対象となった勧告の全体的な傾向としては、様々な人権課題に対処するための全体的な取り組みの実施やその強化を促す内容が多く、あらたな立法や制度改正等を伴う具体的な措置を求める勧告については「留意する」か「受け入れない」とされる割合が高くなることがうかがえる。ヘイトスピーチに関する勧告についても、処罰規定のないヘイトスピーチ解消法(2016年)の枠組み内で対処可能と判断できる取り組みに限られたフォローアップであった。
そうした傾向を踏まえつつ、今回「フォローアップすることを受け入れる」と表明した勧告は180を数え、「部分的に、フォローアップすることを受け入れる」までを含むと、全体の勧告のおよそ3分の2(206/300)についてはフォローアップの意思を示した形となった。その一方で、この中には国内人権機関の設立や個人通報制度、拷問等禁止条約の選択議定書批准のように第1回目のUPR以来、継続して「フォローアップ」の意思を示していながらも実現に至っていない課題も数多くある。これについて日弁連は7月11日の声明のなかで「勧告を出した各国政府からの信頼を損ねるものであるとともに、国連人権システムの軽視と言わざるを得ない」と批判している。「支持した勧告を単にフォローアップするのみならず確実に実行する」(日弁連)ことこそが重要であり、市民社会は継続して関心を払いモニターする必要がある。
[1] 国連人権理事会、UPR審査で日本に死刑廃止や国内人権機関の設立など約300項目の勧告を採択(2/3)
https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section4/2023/02/upr30023.html
[2] 「パリ原則」についての説明は下記のサイトを参照
https://www.hurights.or.jp/archives/institutions/post-1.html
[3] 個人通報制度の説明については下記のサイトを参照
https://www.hurights.or.jp/archives/newsletter/section4/2023/05/post-201957.html
[4] 拷問等禁止条約選択議定書の内容については下記のサイトを参照
https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section2/2006/05/6-3.html
[5] 政府はインタラクティブ・ダイアローグ(事前になされる双方向対話)において、2022年7月以降301名以上の常時雇用する従業員をかかえる雇用主に対して男女の賃金格差についての情報を開示するように義務付けることを含めて様々な対策を取っていると述べている。
[6] 緊急避妊薬については医師の処方箋がなくとも薬局で購入できるOTC化は繰り返し議論されているが実現に至っていない。経口中絶薬については2023年4月28日に承認されたが、母体保護法指定医による入院可能な医療機関・診療所での処方が条件となっており、高額な薬価も含め利用のしやすさにおける課題が指摘されている。
https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_1556.html
(参照)
Report of the Working Group on the Universal Periodic Review Japan (A/HRC/53/15)
Report of the Working Group on the Universal Periodic Review Japan Addendum (A/HRC/53/15/Add.1)
UPR(普遍的・定期的レビュー)第4回日本政府報告
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100442700.pdf
日弁連:第4回普遍的定期的審査(UPR)における日本政府の態度表明に対する会長声明(2023年7月11日)
https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2023/230711.html
(2023年07月18日 掲載)