2023年9月26日、マイノリティ問題に関する国連特別報告者であるフェルナンド・ドゥ・ヴァレンヌ氏と文化的権利の分野に関する国連特別報告者であるアレクサンドラ・ザンタキ氏、そして教育に関する国連特別報告者であるファリダ・シャヒード氏は、新疆ウイグル自治区における国営の寄宿学校制度が大幅に拡大しているという疑惑に対し、重大な懸念を表明しました。この寄宿学校制度は、子どもたちに母語による教育を提供せず、ウイグル人や他のマイノリティのムスリムの子どもたちを家族や地域社会から強制的に引き離し、同化を強制しているといいます。
特別報告者たちは「新疆ウイグル自治区の寄宿学校では、ウイグル語をほとんどまったく使わず、ほぼ公用語のみで授業が行われていること、また、ウイグル人や他のマイノリティの子どもたちが家族から引き離されることで、北京語への同化、漢族の文化的慣習を身につけるよう強制することにつながりかねないことを深く憂慮している」と述べ、この政策の差別的性質と、マイノリティの差別されずに教育を受ける権利、家族生活への権利、そして文化的権利に対する侵害を強調しました。
特別報告者たちが入手した情報によると、多くの子どもたち、主にウイグル人の子どもたちが家族から引き離されており、その中には、親が亡命していたり「抑留」されたりしている非常に幼い子どもも含まれています。これらの子どもたちは、国家当局によって「孤児」として扱われ、寄宿制の学校、幼稚園（幼児園）、孤児院に入れられ、そこで使用される言語はほとんど北京語（普通話：中国において公用語と定められた標準中国語）のみです。
特別報告者たちは「高度に規制・管理された寄宿制の施設に収容されたウイグル人や他のマイノリティの子どもたちは、少年少女期のほとんどを、両親や親戚、地域社会との交流がないまま過ごすことになる」と述べ、「これは必然的に家族やコミュニティとのつながりを失い、文化的、宗教的、言語的アイデンティティとの結びつきを損なうことになる」と懸念を示していています。
このような寄宿学校に入れられたウイグル人の子どもたちは、ウイグル語での教育をほとんど、あるいはまったく受けることができず、ウイグル語と北京語のバイリンガルを目指すとする政府の方針とは対照的に、北京語だけを話し、学ぶよう、ますます圧力をかけられているといわれています。教師もまた、決められた言語の授業以外でウイグル語を使用すると制裁を受けることがあります。
新疆ウイグル自治区では近年、ウイグル人だけでなく他のムスリムやマイノリティの子どもたちに向けた寄宿学校もその数が急激に増加しており、ウイグル語やその他のマイノリティの言語で教育が受けられる地元の学校が閉鎖されているという報告もあり、「この疑惑の規模の大きさは、基本的人権の侵害という極めて深刻な懸念を抱かせるものである」と特別報告者たちは述べています。
特別報告者たちは、これらの問題について中国政府と連絡をとっています。
参照
China: Xinjiang's forced separations and language policies for Uyghur children carry risk of forced assimilation, say UN experts
https://www.ohchr.org/en/press-releases/2023/09/china-xinjiangs-forced-separations-and-language-policies-uyghur-children
参考
中国 新疆ウイグル自治区の人権問題 阿古智子（東京大学総合文化研究科教授）
国際人権ひろば No.163(2022年5月号)
https://www.hurights.or.jp/archives/newsletter/section4/2022/05/post-201929.html
中国の新疆ウイグル自治区を取材して 南部さやか（読売新聞大阪本社社会部記者）
国際人権ひろば No.166(2022年11月発行号)
https://www.hurights.or.jp/archives/newsletter/section4/2022/11/post-201946.html
「中国のウイグル人の人権はいま～在日ウイグル人に聴く」を開催しました（2023/5/10）
https://www.hurights.or.jp/japan/eventreport/2023/05/510.html
（2023年10月04日 掲載）