フォルカー・テュルク国連人権高等弁務官は9月26日、開催中の第54会期国連人権理事会で、2022年4月1日から2023年7月31日までの期間を対象としたミャンマーにおける人権侵害に関して同氏がまとめた報告書を提出し、国軍が市民に対して攻撃をさらに拡大しており、ミャンマーの市民は日々、空爆をはじめとする攻撃や人権侵害に耐え忍び、生活手段や希望が崩れかけていると憂慮しました。
テュルク人権高等弁務官は、前会期(53会期)の7月に提出した報告書の内容より全体的な人権状況がさらに悪化していると述べ、国軍は人道の基本原則を完全に無視し、度重なる国連安全保障理事会による市民への敵対行為の即時停止の要請や、人道援助活動を妨害しないよう求める要請を無視して、広範におよぶ暴力作戦を続けていると指摘しました。
今回の報告書では、国軍による687回におよぶ空爆、地上作戦での10人以上の大量殺害が22件、村の焼き討ちなどを記録しています。
また、サイクロン「モカ」が5月にミャンマーに上陸して以来、国軍は救命医療、シェルター資材、食料、清潔な水を提供するなどの人道援助を組織的に妨げていると報告しています。とりわけ、ロヒンギャ・コミュニティを含むラカイン州の人々、とくに子どもたちに食料を与えることすら困難な状況に陥っているとしています。
人権高等弁務官は、市民は服従を強いられ、国軍の略奪的な利益を維持するために設計された冷酷な抑圧システムに直面していると非難します。そして、国軍が意図的に統治と正義の基盤を侵食しており、市民による法の支配は消滅している、と述べました。
信頼できる情報筋によると、2021年2月の軍事クーデター以降、これまでに4,108人が殺害され、24,836人が逮捕され、19,264人が拘束されたままで、150人が適正な手続きや公正な裁判の権利が保障されないまま、軍が管轄する裁判所によって死刑判決を言い渡されている、としています。
テュルク国連人権高等弁務官は、「私はすべての関係者に対し、民間人に対する人権侵害の申立てが迅速かつ透明性をもって調査され、加害者が責任を問われるようにすること、そのために国際社会がそれぞれの責任を倍加させることを強く求める」と述べ、「事態の深刻さと現場での不処罰が続いている実態を踏まえ、安全保障理事会に対し、ミャンマーの事態を国際刑事裁判所(ICC)に付託するよう改めて要請する」と強調しました。
<出典> OHCHR(国連人権高等弁務官事務所)
https://www.ohchr.org/en/statements-and-speeches/2023/09/myanmar-turk-calls-new-thinking-end-unspeakable-tragedy
Myanmar: Türk calls for new thinking to end "unspeakable tragedy" (26 September 2023)
https://www.ohchr.org/en/documents/country-reports/ahrc5459-situation-human-rights-myanmar-report-united-nations-high
A/HRC/54/59: Situation of human rights in Myanmar - Report of the United Nations High Commissioner for Human Rights (Advance unedited version)
https://www.ohchr.org/en/statements-and-speeches/2023/07/myanmar-deadly-freefall-even-deeper-violence-says-turk
Myanmar in "deadly freefall" into even deeper violence, says Türk (06 July 2023)
(2023年10月05日 掲載)