2月1日にミャンマーにおける軍事クーデターから3年を迎えるにあたって、フォルカー・テュルク国連人権高等弁務官は声明を発表しました。テュルク国連人権高等弁務官は、ミャンマーの人びとの悲惨さと苦しみに対して世界は十分に関心を払えておらず、悪化の一途をたどるミャンマーの人権危機は今や底なしの状態にあると述べます。
「世界中であらゆる危機が起きている中、誰も忘れられないことが重要です。ミャンマーの人々はあまりにも長い間苦しみ続けてきました。軍が戦術的に市民を標的としてきた結果、昨年(2023年)10月末以来、ミャンマーの人びとの状況はさらに悪化しています」と2月1日のクーデターから丸3年を迎える前に人権高等弁務官は述べました。
「国軍と反政府武装勢力の間での激しい戦闘によって、大規模な避難民と民間人の死傷者が出ています。後退に次ぐ後退に見舞われる国軍は、無差別の空爆や砲撃の波を仕掛けています。」
情報筋によると、2023年10月以来554人以上の死亡が確認されています。2023年全体では、国軍によって殺害されたと伝えられている民間人の数は1,600人以上に上り、前年より約300人増加しました。2024年1月26日の時点で、信頼できる情報筋によると、政治的理由で約2万6,000人が逮捕されたと記録されており、うち1万9,973人が現在も拘束されています。拷問や虐待を受け、公正な裁判を望めない状況にある被拘束者もいると伝えられています。 過去3年間で、約1,576人が国軍に拘束されている間に死亡しています。
人権高等弁務官は、「国軍は、敵(反政府武装勢力)を支援しているとみなした民間人を処罰することに一貫して焦点を当ててきました」と指摘し、「その結果、国軍は日常的に民間人を標的にし、医療施設や学校といった国際人道法によって保護される対象を標的にしてきました」と述べます。
「無差別の砲撃と空爆は、事前に危険を回避するための警告を発するための基本的な通信手段の遮断も含めて、地上の民間人を保護するための方策が欠如していることを、浮き彫りにしています。」
ラカイン州の17の郡区のほとんどを含む約74の郡区で、通信およびインターネットが部分的、断続的、あるいは完全に停止しています。
ラカイン州は2023年11月に戦闘が再開されて以来、特に大きな打撃を受けています。 多くのコミュニティ、特にロヒンギャはすでにサイクロン「モカ」の影響と、数か月にわたる人道的アクセスと支援の提供を国軍によって制限されてきたことに苦しんできました。国軍によるロヒンギャへの砲撃のさなか、ロヒンギャの人びとの死傷者について今までに複数回にわたって報告されています。
2024年1月26日、アラカン軍とミャンマー国軍との間の戦闘により、ロヒャンギのHpon Nyo Leik村では少なくとも12人のロヒンギャ民間人が死亡、30人が負傷したと報告されています。そこでは住民が戦闘両当事者の間に挟まれて暮らしています。アラカン軍は国軍の攻撃を予期して、この村とその周辺に部隊を配置したとされ、それに対して国軍は繰り返し村を砲撃し、インフラを破壊しました。
武力紛争の当事者は、軍事作戦の実施において、民間人や民間の財産を守るために常に注意を払わなければならず、これには支配下にある民間人を攻撃の影響から保護するために実行可能な措置を講じることも含まれると人権高等弁務官は述べます。
同様に、ロヒンギャ難民は、バングラデシュのキャンプで悲惨な人道的状況に閉じ込められ、安全な帰還の見通しもなく、危険な海を渡るリスクに再びさらされています。この地域にはロヒャンギ難民を受け入れ、歓迎してくれる港やコミュニティはほとんどありません。
人権高等弁務官は、国際司法裁判所がミャンマーに対し、ジェノサイドに相当する可能性のある将来のすべての行為からロヒンギャの人々を守るために「権限の範囲内であらゆる措置」を取ること、そして申し立てられた行為に関連する証拠の保全を確実にするための効果的な措置を講じることを命じた暫定措置を想起しながら、国際社会は軍の責任を追及する努力を倍加する必要があると述べました。
人権高等弁務官は、「この危機は、国軍指導者の説明責任を追及し、政治犯が釈放され、そして民政が回復することによってのみ解決されるでしょう」と述べ、「私はすべての加盟国に対しこの危機に対処するための適切な措置を講じるよう求めます。それは、国際法を無視し重大な違反を犯すことを抑止するために、武器やジェット燃料、外貨へのアクセスを制限するなど、国軍に対して的を絞ったさらなる制裁を課すことへの検討を含みます」と各国に促しました。
「私は、あらゆる民族コミュニティを代表するミャンマーの市民社会と民主化運動の勇気と強さに称賛を送ります。ミャンマーの民主主義を回復し人権を尊重するためのあらゆる政治プロセスにこの人びとが参加できるよう強く求めます。」
【参照】
テュルク人権高等弁務官、「ミャンマーにおける言いようのない悲劇に終止符を打つために新たな思考を」-安保理にICCへの付託を再要請(9/26) | ヒューライツ大阪 (hurights.or.jp)
(2024年02月05日 掲載)