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政府が税や保険料を滞納する「永住者」の在留資格の取消を検討-移住連が反対声明(2/9)

 政府は2月9日、「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」を開催し、技能実習制度に代わる育成就労制度を創設すること、および「永住許可制度の適正化」という課題を示し、永住許可の取消制度の導入のために入管法を改定するという方針を打ち出しました。
 この方針は、「育成就労制度を通じて、永住に繋がる(現行の)特定技能制度による外国人の受入数が増加することが予想される」という考えのもと、税金や社会保険料を納付しない場合や、窃盗などの罪で1年以下の懲役や禁錮になった場合、出入国在留管理庁(入管庁)が「永住者」の在留資格を取り消せるようにするというものです。
 その方針に対して、NPO法人移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)は同日、永住許可の取消は、現に在留資格「永住者」をもつ外国籍住民はもちろん、今後永住許可を申請しようとするすべての外国籍住民の地位を著しく不安定にするものである、として反対声明を公表しました。
 声明は、日本に生活基盤を築いた外国籍住民が安心して生活していくためには、状況の変化によって更新できなくなるといった心配をする必要のない安定した在留資格が必要である、述べています。永住許可の取消は、外国籍住民が日本で長年苦労して築き上げた安定した生活基盤をはく奪するものだと非難しています。

 在留資格「永住者」は、在留期間や就労分野に制限がない在留資格です。2023年6月末時点で在日外国人の約27%にあたる約88万人で、最も人数の多い在留資格になっています。
 入管庁は、「永住許可に関するガイドライン」として、「素行が善良」「独立の生計を営むに足りる資産または技能を有す」「永住が日本国の利益に合すると認められること」などと定めています。そして、「原則として連続して10年以上日本に住んでいる」「罰金刑や懲役刑などを受けていない」「納税、公的年金及び公的医療保険の保険料の納付などの公的義務を履行している」ことなどを資格付与の要件としてあげています。
 一方、現行の入管法でも在留資格の取消を定めていますが、その要件は、虚偽の内容や手段で永住許可を得たり、虚偽の住所地を届け出たりしていた場合などに限定しています。
税や保険料の滞納に関する情報については、地方自治体などの職員が入管庁に通報する制度が設けられるとみられています。

 移住連の声明は、税金や社会保険料の滞納などに対しては、日本国籍者に対するのと同様に法律に従って督促、差押、行政罰や刑罰といったペナルティを課せば十分であり、外国籍住民にのみ在留資格取消というペナルティが課されるのだとすれば、外国籍住民に対する差別であると訴えます。さらに、親の永住許可と連動して、子どもの永住許可が取り消されるとすれば(2023年6月末現在:18歳未満の永住者は103,104人)、子どもの進路や将来にも多大な影響を与えることになると懸念しています。

<出典>
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/gaikokujinzai/kaigi/dai17/gijisidai.html
外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議(第17回) (首相官邸、2024年2月9日)
https://www.moj.go.jp/isa/publications/materials/nyukan_nyukan50.html
永住許可に関するガイドライン(入管、2023年12月1日改訂)
https://migrants.jp/news/voice/20240209.html
永住者に対する新たな在留資格取消制度の導入に反対する声明(移住連、2024年2月9日)

<参考>
https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section4/2023/11/11124.html
技能実習制度から育成就労制度に改称し、「就労1年」で転職可-有識者会議の「最終報告書」(23.11/24)


(2024年02月26日 掲載)