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第55回人権理事会(2月26日~4月5日)、イスラエルに占領、封鎖の停止を求める

 2月26日から開催されていた第55回国連人権理事会は4月5日、ガザ地区の紛争、ハイチ、イラン、ウクライナなどの人権状況に関する決議など32件の決議を採択して閉会しました。
 会期中の3月4日、テュルク人権高等弁務官は世界の人権状況を概観し、55件もの紛争が各地で国際人道法および人権法が広範に侵害され、多数の民間人に甚大な影響を及ぼしていると述べ、ミャンマー、スーダン、イエメン、シリア、ウクライナ、エチオピア、マリなどを挙げました。また、会期中、コロンビア、グアテマラ、ニカラグア、ホンデュラス、スリランカなどの人権状況について報告されました。

ガザ紛争、パレスチナ被占領地の人権状況
 テュルク人権高等弁務官は2月29日、パレスチナ被占領地に関する対話において、ハマスによるイスラエルの市民殺害、性的暴力、人質の拉致などを非難する一方、イスラエルの反撃がガザ地区で前例のない殺りくと人道的被害をもたらしていると述べました。また3月26日には、パレスチナの人権状況に関する特別報告者の報告書「ジェノサイドの解剖学」(下記URL参照)が提出されました。
 人権理事会は4月5日、イスラエルに対してパレスチナの占領政策およびガザの封鎖を停止すること、および即時の停戦と緊急人道支援のアクセスを求める決議を採択しました。決議はまた、各国に対してイスラエルへの武器弾薬、監視機器、技術などの売却や移転を停止するよう呼びかけました。さらに、東エルサレムを含むパレスチナにおけるパレスチナ人の住居破壊、強制立ち退きなどの違法行為を停止するよう要求しています。
 決議は賛成28、反対6、棄権13で採択されました。米国とドイツは反対し、日本は棄権しました。
 また4月5日、パレスチナの政治的独立、主権および領土の保全を回復することを求める、パレスチナ人の自決権に関する決議も採択されました。
 人権理事会はそのほか、ベラルーシの人権状況について、3人の独立専門家によるグループを緊急に設置することなどを決議しました。

インターセックスの人に対する差別、暴力など
 人権理事会はLGBTIの人の権利について、性的指向・ジェンダー自認(SOGI)に基づく暴力および差別からの保護に関する独立専門家を設置するなどの取り組みを続けてきましたが、この会期において初めてインターセックスの人を対象とした決議を採択しました。
 決議は、インターセックスの人を、典型的男性または女性の身体と、性的解剖学的構造、生殖器官、ホルモンまたは染色体などの性的特徴が先天的に一致しない人として、このような人々が教育、健康、雇用、スポーツ、社会保険や法的能力の行使、司法や救済へのアクセスの制限など生活のあらゆる分野で差別を受けていることを認めています。また、インターセックスの人、および子どもに対して医学的に不必要で不可逆的な措置を本人の同意なしに行われるような暴力や有害な慣行について重大な懸念を示し、人権高等弁務官事務所にこのような人々に対する差別的な法律、暴力、有害な慣行、法的保護やベスト・プラクティスなどについて報告をまとめるよう要請しました。

ディスインフォメーションによる人権への影響に対する国家の役割
 近年フェイク・ニュースや偽情報などのディスインフォメーションに関する懸念が高まり、2021年には「意見および表現の自由の保護と促進に関する特別報告者」がディスインフォメーションと表現の自由に関して報告書を人権理事会に提出し、2022年には国連事務総長が人権と基本的自由の保護・促進のためにディスインフォメーションに対して取り組むという報告書を総会に提出しています。
 特別報告者の報告書によると、ディスインフォメーションとは、「社会に重大な危害を引き起こす目的で意図的に発信された虚偽の情報」とされ、事務総長の報告書は、「不正確な情報、人を欺く意図、重大な危害を起こすために共有されるという要素がある」としています。一方でその定義が社会規範などに対する批判や皮肉にも広げられ、芸術、科学、報道やそのほか一般的な議論を抑圧してはならないことも述べられています。
 決議では、ディスインフォメーションに対抗するにあたり、国が中心的な役割を担うことを確認し、各国に国内外でディスインフォメーションに関するキャンペーンを実施したり、支援しないことを呼びかけ、情報へのアクセス、自由で多様なメディアの促進などによる多様で検証可能な情報源へのアクセスへと改善するよう促しています。また、ソーシャル・メディアを含む企業に人権を尊重しながら、ディスインフォメーションに取り組み、「ビジネスと人権に関する指導原則」に即したデュー・ディリジェンスを実施することを促しています。

(構成・岡田仁子)


<出典>
https://www.ohchr.org/en/hr-bodies/hrc/news-media
Human Rights Council Concludes Fifty-Fifth Regular Session after Adopting 32 Resolutions and Two Decisions (OHCHR. 2024年4月5日)
<参照>
https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section4/2024/04/anatomy-of-a-genocide326.html
「ジェノサイドの解剖学(Anatomy of a Genocide)」-パレスチナの人権状況に関する国連特別報告者が人権理事会に報告書を提出(3/26)ヒューライツ大阪ニュース・イン・ブリーフ


(2024年04月11日 掲載)