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育成就労制度創設と永住資格取り消しを盛り込んだ入管法改定法案が衆院通過(5/21)

3年間の育成就労制度
 外国人技能実習制度に代わる育成就労制度の創設を盛り込んだ「出入国管理及び難民認定法」(入管法)の改定案が5月21日、衆議院本会議で賛成多数で可決されました。法案は、5月24日から始まる予定の参議院で審議されます。成立すれば3年以内に施行されます。
 育成就労制度は、「就労を通じた人材育成と人材確保」を目的としたもので、期間を3年以内と定めています。技能実習制度で問題となってきた、労働者が希望する転籍については、①やむを得ない事情がある場合、②同一業務区分内であること、就労期間(1~2年の範囲で業務の内容を考慮するなど詳細は省令で規定)・技能などの水準・転籍先の適正性に係る一定の要件を満たす場合に限られます。
 育成就労の対象分野は、2019年4月から受け入れが始まった「特定技能1号」にそろえ、さらに熟練した技能を要する「特定技能2号」に移行すると、家族を同伴することができるようになるとともに、一定の条件を満たせば永住者の在留資格を取得することが可能となります。

永住許可の取り消し制度
 法務省は、育成就労制度の導入によって将来的に「永住者」の増加が見込まれるとし、永住許可制度の「適正化」を図るという目的で、税金や社会保険料(公租公課)を故意に支払わない場合や、入管法や刑法違反の罪に問われた場合(執行猶予を含む)、永住許可を取り消すようにする条文案を盛り込みました。
 それに対して、移住労働者の人権問題に取り組むNPOや弁護士団体などが、次々に反対を表明しました。税金や社会保険料の滞納や、退去強制事由に該当しない軽微な法令違反に対しては、日本国籍者に対するのと同様に、法律に従って督促、差押、行政罰や刑罰といったペナルティを科せば対応できることであり、外国籍住民であるがゆえに「永住者」としての在留資格が取り消されるのだとすれば、外国籍住民に対するあからさまな差別であると訴えました。実際、現行法下でも1年を超える実刑を受けたときなどは永住資格が取り消されており、それがさらに厳しくなるというものです。
 そのような懸念を受けて、衆議院の審議において、野党から質問や批判が相次ぎました。
 5月8日の衆議院法務委員会において、永住者の公租公課の不払いに関して、どんな調査を行い、どのような結果が得られたかという質問に対して、出入国在留管理庁は、永住者に生まれた実子の永住許可申請を基に、2023年1~6月に審査を終えた1,825件を精査したところ、扶養者である永住者の住民税、国民健康保険、国民年金などの未納は235件(約13%)あったと答えました。
 一方、5月10日の衆議院法務委員会・厚生労働委員会連合審査会において、厚生労働省は、2020年度の日本全体の国民年金の最終未納率は約19%だと述べました。さらに、永住許可の取り消しに該当する「故意に公租公課を支払わなかった件数」については、入管庁は調査をしておらず、回答することができませんでした。
 衆院の審議を通じて、政府は、公租公課について、永住者の未納率が日本人を含む加入者全体と比べて高いと証明するデータを示すことができませんでした。最終的に、永住資格の取り消しの適用にあたり、対象者の「生活状況に十分に配慮する」という条文が追加されたのみで、「立法事実」が不在のまま法案が採決されました、

政府が目指す「共生社会の実現」に逆行-高まる反対の声
 永住資格の取り消しの方針に対して、外国籍住民当事者の懸念や反対の声も高まっています。
 在日コリアンで構成する在日本大韓民国民団は4月30日、以下のような反対声明を出しています。
「今回の入管法改定案による在留資格取消制度の導入は、日本政府が目指す共生社会の実現」に逆行するばかりか、歴史的な背景により日本に居住するに至った在日韓国人の「永住者」や、また、生活上の様々な事情により、余儀なく日本に居住するに至った在日外国人の「永住者」、さらにはその子孫までも対象とし、納税不履行や軽微な刑事罰等によって簡単に永住資格が取り消されることは、深刻かつ憂慮すべき問題である。」
 横浜華僑総会は5月21日、「われわれ在日華僑団体は、この度の日本政府の入管法改定案は『永住者』の生活、人権を脅かす重大事案と認識し、是正を強く求めます」と声明を出しています。
 また、移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)は、「#永住許可の取消しに反対します」という署名キャンペーンを展開し、5月13日までに寄せられた署名40,974筆(オンライン署名: 13,846筆 ・紙署名: 27,101筆)を5月15日に法務省に提出しました。

(2024年05月22日 掲載)