在留資格「永住者」の取消制度の導入を盛り込んだ入管法の改定案が国会で審議されているなか、「入管事件を闘う大阪弁護士有志の会」は5月23日、永住当事者を報告者として大阪弁護士会館に招いて、「永住権取消に反対する緊急集会~当事者が語る」を開催しました。
集会の冒頭、中井雅人弁護士は、在留資格「永住者」を有す人たちは、長年日本に住んで積み上げた様々な「権利の束」、すなわち「永住権」と呼ぶべき実体を有す人たちなのであるという解釈を示しました。
参加した「永住者」は、ミャンマー、フィリピン、米国、ナイジェリアなどから渡日した人たちで(対面6人、オンライン2人、代読メッセージ1人)、政府の「永住権取消」の方針に対して、異口同音に不安や疑問を訴えました。
難民認定を経て「永住者」となったミャンマー出身のアウン ミャッ ウィンさんは、「永住権をもつための条件や手続きは簡単ではないのに、在留カードの携帯を忘れただけで永住権を取り消されるかもしれないのは納得できません」と述べ、「日本人でも税金を払わない人がいるのに、外国人をねらい打ちするのは平等な対応ではなく、弱い者いじめではないでしょうか」と疑問を投げかけました。
さらに、「私たち外国人は、税金は日本人と平等に支払うよう求められているけれど、もし払わなければ在留資格が取り消されるという重罰は不平等です」と訴えました。
赤ちゃんをあやしながら参加したフィリピン出身の女性は、「税金を支払わなければならないことは理解しています。でも、出産後は体調がよくなく、アルバイトをするのがやっとで、払えなくなるかもしれません。もし私の永住権が取り消され、日本に住めなくなったらと考えると不安で仕方ありません」と語りました。
また、ナイジェリア出身の男性は、自身を含め非正規労働者として工場などで働いている多くの同胞は、「病気で働けなくなり、税金や健康保険どころか、家賃を払うことも難しくなることがあります」と窮状と将来への不安を訴えました。
入管法改定案は、5月21日に賛成多数で衆議院を通過し、24日から参議院で審議が始まりました。そうしたなか、大阪弁護士会は5月22日、入管法改定法案に反対する会長声明を出しています。
「永住権」の取消方針に反対する「永住者」の人たち
(左端はアウン ミャッ ウィンさん)
<参照>
https://www.osakaben.or.jp/speak/view.php?id=339
育成就労制度及び永住許可取消制度を創設する入管法改定等の法案に反対する会長声明
(大阪弁護士会、5月22日)
ヒューライツ大阪ニュース・イン・ブリーフ:
https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section4/2024/05/521.html
育成就労制度創設と永住資格取り消しを盛り込んだ入管法改定法案が衆院通過(5/21)
https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section4/2024/03/315.html
育成就労制度の創設や永住資格の取り消しを盛り込む入管法改定案が国会へ(3/15)
https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section4/2024/02/27-211.html
政府が税や保険料を滞納する「永住者」の在留資格の取消を検討-移住連が反対声明(2/9)
(2024年05月24日 掲載)