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「先住民族の権利に関する専門家機構」年次会合が開催される(7/8~7/12)

 7月8日から12日にかけてジュネーブの国連本部で第17回目となる「先住民族の権利に関する専門家機構」(EMRIP)の年次会合が開催されました。

 EMRIPは「先住民族の権利に関する宣言」(以下、「宣言」)が国連総会で採択された2007年に設置され、国連人権理事会に指名された独立した専門家7名から構成されています。

先住民族の知識と視点を大切にし、尊重することが極めて重要である―トゥルク国連人権高等弁務官

 フォルカー・トゥルク国連人権高等弁務官は開会のスピーチで、先住民族が有する知識と視点を尊重することが極めて重要であり、気候危機、汚染、生物多様性の喪失という三重の危機をくぐり抜ける道をみつけるためには、これらが不可欠であると述べています。トゥルク高等弁務官は、2007年に採択されて以来、宣言が世界中で各国の政策や法的枠組に影響を与えてきたと前進を称える一方で、「発展への権利」を含む人権の完全な享受を先住民族は否定され続けているとの認識を示しました。その中には、宣言に反して先祖から受け継がれてきた土地や資源が奪われたり、軍用地にされるといった事態が憂慮すべきペースで進行していることが挙げられています。

 トゥルク高等弁務官は、先住民族の権利の完全な尊重を確保するために、持続的な取り組みとそれを可能にするための法律や政策の包括的な改革が必要であると述べ、相互の同意にもとづく公正な条件のもとで歴史的な不正義の遺産を克服しなければならないと訴えました。

PFAS汚染、米兵の性暴力、沖縄における米軍基地の問題を訴える

 会合には沖縄から複数の参加があり、集中する米軍基地が引き起こす問題としてPFAS(有機フッ素化合物)汚染や、騒音、米兵による性暴力などについて報告がなされました。

 「宜野湾ちゅら水会」のまつだかなこさんはPFASによって飲み水が汚染され、健康被害が深刻であると述べ、「環境レイシズム」は先住民族であることに加え、女性や子どもなど、社会的・文化的に不利に置かれやすい立場の人々に被害のしわ寄せが起こっていると指摘しました。

 「Peace For Okinawa Coalition」から仲村芳信沖縄大名誉教授が出席し、在日米軍基地の70%以上が国土の0.6%を占める沖縄に集中することによって、米兵による性加害や、環境汚染、戦闘機が日夜を問わず放つ騒音など様々な被害があると報告しました。

 「琉球民族独立総合研究学会」(ACSILs)から参加したメンバーは、2009年にユネスコが消滅危機に晒されている危機言語リストに琉球諸語を加えたことに触れ、日本政府は琉球諸語を固有の言語として認識し、沖縄の歴史とともに琉球諸語を学ぶ機会をカリキュラムで保障しなければならないと訴えました。

日本政府代表部は従来の回答に留まる

 会合に出席していた日本政府代表部は先住民族の権利については言及せず、沖縄県に暮らす、あるいは沖縄県出身の日本国民の権利は平等に保障されていると述べました。2008年以降、国連自由権規約委員会や人種差別撤廃委員会などから6度にわたって沖縄の人々を先住民族と公式に認めるよう勧告を受けていますが、日本政府はアイヌ民族以外に先住民族は存在しないという立場をとっています。また、米軍基地が沖縄に集中することについては、「地政学的な理由と日本の安全保障上の必要性に基づくものであり、差別的な意図に基づくものではない」、「県民投票の結果を真摯に受け止め、日米間で合意された沖縄の影響緩和の早期実現に向け、引き続き全力で取り組んでいく」と20239月に国連人権理事会で玉城デニー沖縄県知事が行った演説に対する政府答弁を繰り返すに留まりました。

 県民投票とは、20192月に実施された米軍普天間飛行場の移設に伴う「辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票」を指し、辺野古埋立てに7割を超える反対多数の民意が示されていました。沖縄県は埋立て工事を不承認としていましたが、国は反対する沖縄県に代わって工事を承認する「代執行」の手続きを行い、20241月に工事に着工しています。

参照

HC Türk: "It is crucial to value and honour the knowledge and perspectives of Indigenous Peoples."
https://www.ohchr.org/en/statements-and-speeches/2024/07/hc-turk-it-crucial-value-and-honour-knowledge-and-perspectives

国連で基地問題訴え 仲村沖大名誉教授ら「沖縄に集中 被害」
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1398520

国連でPFAS汚染、米兵の性暴力を報告 沖縄から参加、基地問題訴え
https://ryukyushimpo.jp/news/national/entry-3274039.html

沖縄 玉城知事 国連人権理事会で演説 "民意に反し移設強行"
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/statement/102279.html

辺野古の地盤改良工事 「代執行」訴訟 県の敗訴確定
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240301/k10014376581000.html

(2024年07月26日 掲載)