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子どもの権利条約の選択議定書起草の作業部会設置などを決議-第56会期国連人権理事会(6/18~7/24)

悪化する世界の人道状況-人権高等弁務官
 テュルク人権高等弁務官は開催初日、人権高等弁務官事務所の収集した世界の人権状況に関するデータを示し、武力紛争で亡くなった民間人の死者が2023年に72%増加し、女性の割合は前年に比べて倍増したこと、そして子どもの割合が3倍になったと報告しました。また、ガザ地区とヨルダン川西岸地区での状況、イスラエルとレバノン間の対立の拡大、ウクライナ、スーダンの状況など紛争の激化による人道状況の悪化について報告しました。

子どもの権利条約の選択議定書検討作業部会の設置
 2022年、ウズベキスタンのタシュケントで世界保育・幼児教育世界会議が開催されました。そこでは、質の高い保育・幼児教育が子どものウェルビーイング(身体的・精神的・情緒的な安定性など)や包括的な成長、ジェンダー平等、衡平な社会や持続可能な開発を可能にするものであるとの認識を示す一方、保育・幼児教育が国および国際的な教育政策において相対的に重要視されていないことを認め、すべての子どもの平等でインクルーシブな、質の高い保育・幼児教育を提供することなどを謳った宣言が採択されました。
 今回の人権理事会は、その宣言を受けるとともに、2億5千万人の子どもや若者が中等教育を受けていないというユネスコの報告、および世界の就学前の子どもの50%近くが幼児教育を受けていないというユニセフの報告を懸念し、教育の権利が保育・幼児教育を含むことを明示的に認め、国家が少なくとも1年間の無償の就学前教育をすべての人に提供し、中等教育を無償ですべての人に提供することを目的とした子どもの権利条約の選択議定書の策定の可能性を検討し、起草するための政府間作業部会を設置することを決めました。決議はまた、作業部会に選択議定書の検討・起草にあたって子どもの参加を確保するよう要請しています。

銃・弾薬の製造・販売に関わる企業の責任などに関して決議
 53会期の人権理事会に、民間人の銃の取得、保有および使用の影響に関する人権高等弁務官の報告書が提出されました。そのなかで、2017年調査によると世界で銃の13%を軍、2%を法執行機関が保有するのに対し、85%を民間人が保有していること、同年に国連薬物犯罪事務所(UNODC)が記録した殺人の54%が銃によることなどがあげられていました。
 今会期の人権理事会は、世界で銃の数が増加しており、銃が関連するほとんどの殺人が紛争状況ではないところで起こっていること、毎年何十万もの人が命を失い、負傷していることなどを懸念し、各国に対して、民間人の銃の取得、保有および使用による人権侵害を減らすために銃が関連する暴力の根本原因に対処するための適切な立法、行政その他の措置をとること、そして銃や弾薬の製造・販売に関わる企業に対して、その事業に関連する人権に対する否定的な影響を防止し緩和するなど「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づく責任を検討するほか、子どもの銃の取得や保有の規制の強化などを呼びかける決議を採択しました。

女性の人権に関するパネル・ディスカッション
 56会期では、女性の人権に関するパネル・ディスカッションが開催され、女性と少女に対するジェンダーに基づく暴力としての経済的暴力、経済と女性の人権について議論されました。人権理事会は、女性に対する差別的な法および政策を廃止し、女性と少女の意味のある参加を妨げる、政治的、文化的、制度的障壁などを取り除くよう求める決議を採択しました。決議ではさらに女性と少女の貧困を解消するため、ジェンダーに対応した社会保障、税制、ケアなどを含む分野で直ちに措置をとることを呼びかけました。

 また、56会期では、国連ビジネスと人権作業部会が、2023年7月から8月にかけて実施した日本への訪問調査の報告書について公表するとともに、6月26日の会合で報告書について概要報告を行いました。
(構成・岡田仁子)

<参照>
https://www.ohchr.org/en/hr-bodies/hrc/regular-sessions/session56/regular-session
56th session of the Human Rights Council (18 June to 12 July 2024)

https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section4/2024/05/528.html
国連ビジネスと人権作業部会、日本への訪問調査の報告書を公表(5/28)-多岐にわたる勧告(ヒューライツ大阪ニュース・イン・ブリーフ 2024年5月31日掲載)


(2024年08月02日 掲載)