各国で設立された国内人権機関の連合体である「国内人権機関世界連盟(GANHRI)」がウェブサイトで公開している国内人権機関の認定状況が更新されました。
国内人権機関(National Human Rights Institution: NHRI)とは、国際人権基準に則って人権を保護、尊重、推進するために憲法または法律にもとづいて設立される国の人権機関です。国の機関ではありますが、「政府からの独立性」が重要な要件となっています。
1993年に国連で採択された「国内人権機関の地位に関する原則(パリ原則)」は、国内人権機関が政府から独立して人権侵害の救済や立法・政策提言、人権教育の機能を果たすために、人事と財政に関する独立性と自律性、委員の多元性・多様性などの原則を示しています。
GANHRIは、各国の国内人権機関がパリ原則に準拠しているかどうかを審査する役割を担っており、A(完全にパリ原則に準拠)、B(部分的にパリ原則に準拠)にランク付けしています。2024年7月19日現在における国内人権機関の認定状況によると、Aは90、Bは28を数え、あわせて118がパリ原則に準拠した国内人権機関として認定されています。2023年11月以降、パキスタン、スリランカ、そしてパラグアイの国内人権機関が新たにA認定を獲得しています。
国内にGAHNRIに認定された国内人権機関を複数有する国もあります。ベルギーには、あらゆる差別と闘い機会均等の実現を目的として1993年に設立されたUnia(ユニア)という名称の人権機関と、パリ原則に準拠した国内人権機関を目指して2019年に設立された連邦人権機関の2つが存在します。イギリスにも、平等人権委員会(EHRC)の他にスコットランド人権委員会と北アイルランド人権委員会の3つの国内人権機関があります。
国際人権基準の実現に不可欠な機関として国際社会に広く認識され、既に実現している一方で、日本にはいまだに国内人権機関はありません。
法務省の人権擁護機関はありますが、政府から独立性の要件を満たさないために国内人権機関とはみなされておらず、1998年の「市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)」の第4回政府報告書審査以降、各条約委員会の政府報告書審査や国連人権理事会の普遍的定期的審査(UPR)で、繰り返し設立を勧告されています。最近でも、国連ビジネスと人権作業部会が第56会期国連人権理事会(6/18~7/24)で報告した訪日調査結果において、人権侵害の救済にとって極めて重要であるにもかかわらず日本に国内人権機関が存在しないことに深い憂慮を示しています。
【参照】
国内人権機関世界連盟(GANHRI)ウェブサイト
https://ganhri.org/membership/
【参考】
日本に国家(国内)人権機関を | ヒューライツ大阪(一般財団法人アジア・太平洋人権情報センター) (hurights.or.jp)
国家機関(国内人権機関)の地位に関する原則(パリ原則) | ヒューライツ大阪 (hurights.or.jp)
国連ビジネスと人権作業部会、日本への訪問調査の報告書を公表(5/28)-多岐にわたる勧告 | ヒューライツ大阪 (hurights.or.jp)
(2024年10月11日 掲載)