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市民社会などのステークホルダーによるビジネスと人権に関する行動計画(NAP)の評価指標作成の取り組み

 国連人権理事会で2011年に「ビジネスと人権に関する指導原則」(以下「指導原則」)が承認されたあと、それを国ごとに実施するための国別行動計画の策定が要請されました。日本では2020年に「『ビジネスと人権』に関する行動計画(2020-2025)」(以下「NAP」)が策定されました。NAPは2025年に改定される予定です。
 この間、日本政府はNAPの実施状況を年ごとの「レビュー」として外務省サイトで公開してきています。その中で、NAPに掲げられた各省庁が実施する80以上の施策の実施状況も、「行動計画施策実施状況一覧」として公開されてきました。
 現在、NAP策定に関与してきたステークホルダーのメンバーにより、NAPの実施状況を評価するための指標を作成する取り組みが行われています。具体的には、「NAPの諸施策の実施が社会の中でどのような変化を生み出し、権利保持者の人権がどの程度保護されるに至ったか」というインパクト(影響)を測る指標案を作成し、政府の指標策定を促進するとともに、ステークホルダー間の協働の機会にもしたい、とされています。

 NAPの実施状況を評価する際には、そのための評価指標が重要な意味を持ちます。上記のようにNAPは指導原則を国が実施するための政策文書であり、その中に含まれる各施策が指導原則をどの程度実施できているかを評価指標によって測る必要があるからです。この点、国連ビジネスと人権に関する作業部会の「ビジネスと人権に関する国別行動計画の指針」も次のように指摘しています。―「NAPの改定は、企業に関連する人権への負の影響を防止・軽減・救済するために既存のNAPが実際にどの程度効果があったかについての徹底した評価に基づくべきである。」
 国連ビジネスと人権に関する作業部会が2023年に行った訪日調査の報告書でも、NAPの改定に際して、その進捗状況を評価するための人権指標を明確にすることを日本政府に勧告しています。

 今回の指標作成の動きの背景には、政府が策定し運用している評価指標が指導原則の実施状況を適切に評価できるものであるかどうか、つまり、施策の実施回数などのアウトプット指標にとどまり、人権への負の影響を有効に防止・軽減することにつながったかどうかを測るアウトカム指標あるいはインパクト指標になっているかどうかの懸念がぬぐえないことがあります。
 実際、直近の「3年目レビュー政府報告」での87施策の実施状況をみると、アウトプット指標によって実施状況が記載されていると考えられるものが少なくありません。またそのうち25施策では、本来は実施状況を測るための評価指標として「実施状況」と記載されており、実質的に評価指標は策定されていないとも考えられます。
 なお、政府が公開している「行動計画施策実施状況一覧」は微細な文字で判読しづらいPDFの一覧表であり、アクセシビリティが考慮されているのかも疑問の残るものになっています。市民、消費者、企業などあらゆるステークホルダーにとってアクセスしやすいとは言えず、したがってステークホルダーによる検証が容易にできないとも言えるこうした状態は、上記の「ビジネスと人権に関する国別行動計画の指針」がNAPのあらゆるプロセスにおいて必須の条件として求めている包摂性と透明性が脆弱であるということでもあります。ヒューライツ大阪では、「ビジネスと人権」サイトで視認性を改善したエクセルファイルを提供しています(下記「ビジネスと人権に関する国別行動計画」ページ)。またビジネスと人権NAP for ALLサイトでは、さらにその内容をテキスト化した情報が提供されています(下記「NAP施策実施状況2024(3年目レビュー政府報告)」ページ)。

<参考>


(2025年02月18日 掲載)