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国際人権ひろば No.79(2008年05月発行号)
人権の潮流
アジアに人権の灯を燃やせ! 第3回アジア人権フォーラム 「アジアの移住者の子どものための地域人権協力」に 韓国の若者とともに参加して
朴 君愛(パク クネ) ヒューライツ大阪主任研究員
アジアの人権問題を喚起する場を若者と市民社会に提供
今回で3回目となった「アジア人権フォーラム」は、2008年2月19日に、(社)アジア人権センター、高麗大学国際大学院、国連人権高等弁務官事務所東南アジア地域事務所などが共同で主催し、韓国ソウルの高麗大学・国際館で開催された。また、フォーラムに続いて3日間、「第4回若者の人権活動家のためのワークショップ」が同じ場所で開催された。会場は満席の約240名の参加があった。韓国のNGO、関心のある市民に加え、翌日からのワークショップに参加する約60名の若者を含め、国際的な人権に関心のある高校生、大学生が熱心に参加していた。
このフォーラムの企画実施を中心に担っているのは、2006年に結成された「アジア人権センター」(事務所 ソウル)である。この団体は、アジア地域の人権保障のシステムの確立とこの地域の人権促進に貢献する人材育成を目的に活動しているNGO である。結成されてまだ年数は浅いが、毎回、アジアやヨーロッパで国際的な人権活動をしているNGO 、国際機関あるいは政府関係者を招き、韓国内でアジアの人権問題や国際的な人権規準についての関心を高める活動を精力的に行っている。
第1回フォーラムは「児童労働と人身売買」、第2回は「子どもの商業的性的搾取に関する問題」をテーマに議論が交わされたが、第3回目のテーマは、「アジアの移住者の子どものための地域人権協力」であった
※。 以下、基調講演を中心にしてプログラムの内容を簡単に紹介する。
「移住者の子どもの権利についての若者の宣言文」発表
フォーラムとワークショップの両方に参加する高校生を中心とした若者たちが事前に集まって「移住者の子どもの権利についての若者の宣言文」を作り、その代表がフォーラムの冒頭に宣言文を読み上げた。自分たち若者がアジアの移住者の子どもたちの厳しい人権侵害の現実を直視し、移住者の子どもの人権問題に継続して関心を持っていくべきであること、移住者の子どもも同じ社会の構成員としてその権利が保護されなければならないこと、そしてその実現のために韓国政府に必要な方策を講じることを要求するなど自分たちの考えを発表し、会場から賛同の拍手が寄せられた。
プログラム
・基調講演「移住者の子どもの人権保護のための国連子どもの権利条約の遵守及び履行」
イ・ヤンヒさん(国連子どもの権利委員会委員長、韓国・成均館大学教授)は、現在、世界中で約1億7500万人の国境を越えた移住者がいるが、人口比にすると35人に1人を数えるほどになっている中で、移住者の子どもたちが様々なタイプの人権侵害に直面している現状を説明した。そして移住者の子どもたちの人権を守るための国際的な人権メカニズムがないのではなく、その履行が十分でないことが問題であると指摘した。人権メカニズムとして、193国が批准している子どもの権利条約と2つの選択議定書、さらに子どもの権利委員会の一般的意見6「出身国の外にいる保護者のいない外国人の子どもに関する一般的意見」などを挙げた。履行するためには、何よりも政治的意思の有無にかかっていることと、国際的な協力の必要性を強調した。
基調講演に続いて、第1セッション「アジアの移住者の子どもたちの人権の実態」では、国際NGOのスタッフが、 移住者の子どもたちが商業的な性的搾取の危険にさらされている実状、韓国内の移住者の子どもの教育や医療の問題、中国東北部の北朝鮮からの無国籍の子どもたちの実状について報告した。韓国国家人権委員会学校教育担当者が報告に対し、討論者として発言した。
第2セッション「移住者の子どもたちの人権保護のための東南アジアの協力の事例」では、韓国にくらすビルマ(ミャンマー)からの難民や移住者の子どもの支援活動、国際NGOによるメコン川流域の移住者の子どもの人権保護のための国際協力、ILOの人身売買根絶のための取り組みについて報告があった。国際移住機関(IOM)ソウル事務所代表が報告に対し、討論者として発言した。
第3セッション「政府間の協力の模索:アセアンとEUの事例」では、移住者の子どもの人権保護のためのアセアンの取組みについて、国連人権高等弁務官事務所東南アジア事務所所長が報告をし、EUでの政策について、ベルギー内務省から報告があった。また韓国の法務省の外国人政策担当官とモンゴルの国務総理室の国家児童局局長が移住者の子どもたちの実状と人権保護のための国の政策について紹介した。
こうして、タイ、モンゴル、ベルギー、韓国から約20名のゲストによる盛りだくさんのフォーラムは、共同主催者であるアジア人権センターのユン・ヒョン理事長と人権高等弁務官事務所東南アジア事務所のホマユン・アリザデ所長の閉会あいさつで、成功裏に幕を閉じた。
※第1回の概要は本誌No.66・2006年3月号(
https://www.hurights.or.jp/archives/newsletter/section2/2006/03/--1-.html)、
第2回は同No.72・2007年3月号(
https://www.hurights.or.jp/archives/newsletter/section2/2007/03/2-4.html)に掲載しています。