ヒューライツ大阪は
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交流ハブをめざします
国際人権ひろば No.82(2008年11月発行号)
ヒューライツ大阪からのお知らせ
日本メコン友好年にむけた市民セミナーの報告: 「水の声~国際河川セサン・セコン・スレポックの ダム開発と脅かされる カンボジア北東部の人びとの暮らし」を開催(10月3日)
10月3日、NPO法人メコン・ウォッチと共催で、カンボジア現地NGOのキム・サンハー(Kim Sangha)さんをむかえて、標記セミナーをヒューライツ大阪セミナー室にて開催した。メコン・ウォッチ理事の土井利幸さんの通訳で、キム・サンハーさんから、国際河川メコン川の支流である三つの河川をめぐる開発の現状と課題について報告いただいた。
国際河川メコン川は、チベット高原に源流を発し、中国、ラオス、タイ、ミャンマー(ビルマ)、カンボジア、ベトナムの6カ国を経由して南シナ海に流れ出ているが、カンボジア北東部には「セコン」、「セサン」、「スレポック」の3つの支流があり、上流にはラオスやベトナムが位置し、下流はカンボジア領内でメコン川の本流に流れこむ。特にベトナムとカンボジアを流れるセサン川には、ベトナム側でヤリ滝ダムが建設され、このダムの貯水池の閉門と放水は川の水量に大きな変動をもたらしており、下流のカンボジアで深刻な環境・社会経済上の被害を招いている。それにも関わらず、セサン川には現在アジア開発銀行主導のもと多くの水力発電プロジェクトが 次々と計画されている。ここでは、多くの先住民族が水・魚・薬草・森・農業・水運など、三河川の恵みを受けて長い間、生活してきたが、大規模な開発が自然環境や地域共同体を破壊している現状とNGOのとりくみが報告された。
質疑討論では、ベトナム、カンボジア両国政府の対応や国際組織のメコン委員会の関わり、国際的な支援ネットワークの現状などについても、話し合われました。2009年1月から「日本メコン交流年」がスタートし、日本政府は幅広い分野で日本とメコン地域間で交流事業を実施するとしているが、現地の人びとの視点から日本政府の推進する大規模開発プロジェクトの問題点を監視する必要性を感じた。(前川実)
国際シンポジウムの報告:
「多文化家族と地域社会-日本・韓国・台湾における
共生を考える 」
(10月18日)
日本や韓国、台湾では近年、他のアジアの国々から国際結婚を通じた女性の移住が急増している。そうした受入国において、人権の視点から実際にどういう課題が生じており、それをどう取組もうとしているのか情報の共有と意見交流をめざし、10月18日に、ヒューライツ大阪、(財)とよなか国際交流協会、(財)とよなか男女共同参画推進財団の共催で、国際シンポジウム「多文化家族と地域社会
-日本・韓国・台湾における共生を考える 」を開催した。会場のとよなか男女共同参画推進センターすてっぷホールには、NGO、研究者、学生など様々な立場の人たちが約70名参加した。
第一部は、ゲストとして、韓国からは、金賢美さん(延世大学副教授・ジェンダー研究所所長)が、多文化家族支援法などの政府の政策を批判的に検討し、NGOとの考え方の違いを報告した。台湾は、夏曉鵑さん(世新大学社会発展研究所副教授、南洋台湾姉妹会理事)が、台湾の政府の政策の問題点を指摘し、当事者のエンパワメントの重要性を報告した。日本は、三木恵美子さん(弁護士、NPO法人女性の家サーラー理事長)が、政策での立ち遅れを指摘しながら、草の根レベルでの取り組みや道を拓いてきた当事者の力強さについて報告した。第2部では、地元の取り組みとして、フィリピン出身の平松マリアさん(とよなか国際交流協会相談員)と、地域の女性を対象に相談活動を行っている川畑真理子さん(とよなか男女共同参画推進センターすてっぷ相談担当主任)が、経験を通じた外国人女性に対する支援の状況やあり方について報告した。シンポジウムの詳しい報告は、本誌次号(2009年1月号)に掲載する予定である。(朴、藤本)