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国際人権ひろば No.86(2009年07月発行号)

ヒューライツ大阪からのお知らせ

国境を超えた子どもの奪取に関する講演会を 関西アメリカンセンターと共催(5月 20日)

 ヒューライツ大阪は、米国の元国務次官補(領事担当)で、NGO「国際行方不明児および被搾取児童センター」(ICMEC)の政策部長のモーラ・ハーティさんを講師として、「国際的な子の奪取の民事面に関するハーグ条約」をめぐる課題を中心に、関西アメリカンセンターと共催して5月20日に同センターで講演会を開催した。参加者は約40人。講演の要旨は以下のとおり。

〈モーラ・ハーティさんの講演〉


 「国際的な子の奪取の民事面に関するハーグ条約」の定義する子どもの奪取とは、離婚や別居した夫婦のどちらか一方が、それまで子どもが住んでいた家や地域から国境を越えて不法に連れ去ったり、家に戻ることを阻止したりすることである。国際結婚や離婚の増加、国境を超えた移動が容易になったことにより、そのような事例が増えている。この条約は、奪取された子どもの早急な常居所地国(平常の居所)への返還を確保することを目的として、締約国に行政的、司法的な手続の整備などを義務づけている。
 しかし、日本はG7諸国の中で唯一この条約を批准していない。だが、日本が批准することは日本人にとっても利益をもたらすことになる。実際の例として、「はな」という名前の2才の日本人の女の子は、父親によって日本から米国に連れ去られたが、ICMECの姉妹機関であるナショナル・センターの協力を得て、現地の警察に保護され、現地の家庭裁判所が直ちに手続をとり、4カ月で日本の母親のもとに返された。
 ナショナル・センターが対処する行方不明の子どものケースで、親による奪取の65%が米国外に連れ去られたとされる。日本にもすでに多くの子どもが連れて来られているが、その数は今後増えることが予想される。
 連れ去られた子どもはいままでいた環境、もう一方の親や家族、学校や友達から引き離されることになる。また、引き離されている期間が長ければ長いほど、言葉や文化が問題となってしまう。子どもを連れ去られた親にとっては、子どもを取り戻すために、多大な時間と費用を負担しなければならない。日本には、親が子どもを連れ去ることを犯罪とする法律もなく、ナショナル・センターでは、日本に連れ去られた子どもが民事または刑事手続によって返された例はないという。2009年5月現在、81カ国が批准するこの条約は、子どもの奪取の問題に多国間で協力し統一的な対応をもたらすとともに、子どもの最善の利益の確保をめざす。そのために、日本政府に早期の批准を呼びかけたい。

4カ国による共同記者会見と共同声明


 翌5月21日、東京でハーティさんの講演が行われた後、米国、カナダ、フランス、英国の4日国代表は、在日米国大使館で「1980年国際的な子の奪取の民事面に関するハーグ条約」に関して、記者会見を行い、共同声明を発表した。その中で、4カ国は、日本に対し、同条約に加盟すること、さらに、子どもと引き離された親が、子どもと接触を保ち、訪問することができるようにするための措置を実施することを求めた。
共同声明の全文は、http://tokyo.usembassy.gov/j/p/tpj-20090521-79.html

(構成:岡田仁子、藤本伸樹・ヒューライツ大阪)