NGOおじゃま隊(第3回)
女性のエンパワメントや権利向上のための情報を提供する総合的なポータルサイト〔玄関口〕をめざして、2009年5月に「ウィメンズ・アクション・ネットワーク(愛称:WAN「ワン」と読む)」はウェブサイトを立ち上げた。今回は、2週間に1回開催の運営委員会の日におじゃまして、理事のみなさんに話を伺うことにした。インタビューは、中西豊子さん、牟田和恵さん、岡野八代さん、古久保さくらさんに話していただいた。慣れない「ウェブ文化」と試行錯誤・奮闘の最中だとみなさんは語っていたが、WANはウェブ上でその使命を果たすべく日々進化していた。
8月30日の衆議院選挙に向けて、早速、「女性政策」に関する政党アンケートを実施し、その回答をまとめてサイトに公開するとともに、他のグループの質問についても情報提供していた。有権者にとって女性政策について政治家の姿勢を知るのに大いに参考になったはずだ。WANの活動がきっかけになって、世代を超えて女性たちが集いはじめている。
オープニングまでの経過は?
〔中西〕 5年くらい前から、時代が変化してきたのを感じ、ウェブ上でこそ情報を発信・交流する場を作らなければという思いはありました。予算や技術的なことが壁となって時間がかかりました。
〔牟田〕 中西さんが、女性情報を伝えるフェミニストブックストアを初代として、開店されたのですが、引き継いだ大阪のドーンセンター(「大阪府立男女共同参画・青少年センター」)のお店が大阪府知事のドーンセンター売却の方針のために危機に瀕し、他での開店を考えました。そして結論はWANを通じての「インターネットでの本屋」でした。くわしくはサイトの「ブックストアB-WAN」をみてください。
〔中西〕 大掛かりな情報サイトを作り維持するにはかなりの資金が必要です。資金集めに苦労しましたが、ジェンダー平等に逆風となるような政治の流れが続く中で、今こそ、総合的な女性情報を提供し、つながる場が必要だということで立ち上げにいたりました。韓国では、「イルダ」("成し遂げる"という意味の韓国語)という女性たちによるインターネット新聞が2003年にスタートしていますが、その充実ぶりにも触発されました。
〔牟田〕 5月30日の京都でのオープニングの集まりには、会場ぎっしり約300人に参加していただきました。多くの人たちがWANを必要だと思っていただいていると確信しています。以前からずっと女性運動で頑張ってきた人たちも、若い人たちも、世代をこえて一緒に集いました。
ウェブ開設後2か月あまり、反応はどうですか?
〔牟田〕 サイトは、インターネットに全然アクセスしなかった層にも見ていただいています。「よくある質問」を読むとそれがわかりますよ。「コンピューター画面をクリックする」がわからないという質問もあったし。
〔岡野〕 私もネットやブログの世界をあまり知らなかったので手探りでやっています。新聞記事の執筆とは違いますね。読み手の反応がすぐ返ってます。ネットでは反応が早いし、こちらが意図して書いたこととは違う、思いもよらない反応もあります。
〔牟田〕 このサイトが立ち上がって良かったという声をいただいています。個別で女性情報を発信しているサイトはあるけれど、女性たちの声を本気で広くつなげていこうとするサイトはこれまでなかったというような。ネット上では、ジェンダー平等をバッシングする側の発信のほうが声が大きいですから。
〔古久保〕 7月に開催された国連女性差別撤廃委員会の日本政府報告審議での傍聴レポートもいち早くアップできました。ニューヨークでの委員会に向けて、日本から多くの女性たちが参加すると聞いていたので、ネットワークを生かして記事掲載を依頼しました。私たちは情報のポータルサイトをめざしているので、ここを見た人がまたいろんな他のHPに飛んでいってほしいです。
「A-WAN」と「B-WAN」、団体紹介のコーナーについて教えてください
〔牟田〕 団体紹介コーナーはもっと多様な団体に参加してほしいですね。「女性」が活動の中心テーマではなくても、広い意味でめざす方向が私たちと同じであれば歓迎です。「団体登録」をすると何かしなくてはならないのかという誤解もあるようですが、ここは各団体の広報・宣伝のために使ってほしいと立ち上げたコーナーです。外国人の課題をふくめ人権をテーマに活動している団体の登録ももっと増えていってほしいです。
〔中西〕 アートと女性をつなぐ「A-WAN」コーナーは、私たちの活動の目的の一つである「女性たちのエンパワメント」がキーワードです。このコーナーでは、まず女性のアーティストをサポートしていきたいと思っています。このコーナーは、女性が置かれている状況を表現している、個性的でWANらしい作品を紹介できているなあと思っています。
〔岡野〕 理事かつB-WAN店長として、ウェブを勉強する日々です。現在、3日に1回「イチオシ隊」のメンバーが交替で本を推薦して短い書評を書いています。「イチオシ隊」には本が好きでWANの活動に賛同している人たちが25人くらいいます。研究者もいるし学生さん、社会人の方もいて多様です。DVDを含めて興味深い読み物がたくさん紹介されています。若い人もメンバーなのでコミックが紹介されたりするところが、ちょっと自慢です。B-WANを通じて、ネットショップのアマゾンで推薦の本やDVDが買える仕組みになっています。私もここで、あれこれ買っています。
〔牟田〕 アートは、アーティストやギャラリーをやっている人たちが協力してくれていて、それぞれの得意な分野でWANを支えてくれています。
〔中西〕 将来的には、このサイトを見ている人たちと双方向なやりとりをしていきたいと思っています。難しい課題があるとは思うけど、これは絶対やりたいので。
ウェブ会員(無料)もWAN会員も寄付も大募集中!
〔牟田〕 ウェブ会員になるとメールマガジンが配信されます。現在909人が登録していますが、登録はハンドルネーム、パスワード、メールアドレスだけで、無料です。ウェブ会員による各地のイベントを紹介するイベント・カレンダーは結構利用されています。先ほど説明した団体登録をすると、各団体のキャンペーンや事業などを「活動レポート」コーナーで紹介できますよ。
〔中西〕 研究者が結構理事になっています。学者というと机の側から離れないイメージがあるかもしれませんが、WANの理事は、「動く学者」たちです。その行動力を私はとても評価しています。WANはまだ出発したばかりで、これを維持発展するためには、みなさんのサポートが必要です。ウェブ会員ももちろんですが、WANの運営・協力していただける法人会員も大募集中です。
熱く活動の説明をする理事のみなさん
(左から、牟田和枝さん、岡野八代さん、中西豊子さん)
近い将来、英語での発信もめざしておられるのですね
〔中西〕 日本の女性たちは発信力が弱いと思うことがあります。日本で女性たちは厳しい状況の中で個々には頑張っているのに、国際社会でそれが充分伝わっていない。日本の女性たちは、ただ黙って我慢していると思われたりする。その一つには、日本語だけの情報になっていることもあるでしょう。
〔牟田〕 日本語情報を英語にするには、相当の時間とエネルギーが必要ですが、将来的には多言語での発信ができればいいと思っています。
〔理事のみなさん〕 やっと日本で、女性たちがそれぞれ意見の違いや立場はあるけれど、女性のエンパワメントと権利向上という大きな目標に賛同する限り、みんながつながっていこうとする動きになってきたと思います。その力をもっと確かなものにして、在日外国人女性や国際的にもぜひつながっていきたいです。
ウェブサイト:http://wan.or.jp/
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