大阪市の外国人登録者数は、2001年に12万人を超え、その後も約12万人で推移している。全体の数は近年ほとんど変わっていないが、国籍別の比率が変わってきている。韓国・朝鮮籍の比率が減少し、他の国籍の比率が増加している。現在、韓国・朝鮮籍が約7割で、中国籍が約2割を占めており、全体の約95%がアジア諸国出身である。10年前には約8割を占めていた韓国・朝鮮籍住民は、歴史的経緯を有する特別永住者が大半であるが、高齢化による死亡や「帰化」による日本国籍取得などの理由で減少している。
在留資格別では、入国管理局の大阪府域の統計では特別永住者、永住者、留学生、日本人の配偶者等という順番になっている。大阪市の20人に1人が外国籍住民で、政令指定都市の中ではトップである。また10組に1組の夫婦が、少なくとも一方が外国籍であり、市への出生届では16人に1人が、父母の少なくとも一方が外国籍住民である。
外国籍住民が多く住んでいる区は、3万人以上の生野区が1位で、7,000人以上が3区、5,000人以上が4区ある。過去5年間に、外国籍住民が5%以上増えている区は9区あり、急増している地域は市内の中心エリアや湾岸エリアである。こうした変化の中で、言語・国籍・文化・生活習慣が多様化するとともに、外国籍住民にかかわる課題も複雑化している。
本市では、外国籍住民基本指針(1998年策定、2004年改定)の目標を「外国籍住民の人権の尊重」「多文化共生社会の実現」「地域社会への参加」とし、外国籍住民施策を総合的に推進している。国際化施策と、人権や地域住民との共生を主眼とする外国籍住民施策の担当部署が連携しながら、事業を進めている。
外国籍住民にかかわっては130を越える事業が実施されているが、たとえば、「情報提供・コミュニケーション支援」の分野では、区役所や生活に特に関係する施設、あるいは法律相談において、三者同時会話ができるトリオフォンを使って多言語対応している。また、生活情報冊子「エンジョイオオサカ」(5言語)の配布やホームペ―ジ「リビングインフォーメーション」(6言語)で生活情報を提供している。
日本語の学習支援では、教育委員会での基礎レベルの日本語教室をはじめ様々な地域の識字・日本語交流教室等が開催されている。地域の識字・日本語交流教室の多くはボランティアに支えられている。
子どもの教育に関しては、学校教育で「外国青年招致事業」や「英語でわくわく1・2・3事業」を行うなど在日コリアンが多く住む町という経験・蓄積を活かし、国際理解教育を行っている。また、外国籍の子どもたちが、民族的アイデンティティが尊重されて自己を確立できるように、母語やルーツを持つ国の文化を学ぶ機会を提供するとともに、日本語が十分できない児童・生徒や保護者を支援している。たとえば、小学3年生までは日本語指導協力者を学校に派遣し学校と協力をしてサポートを行い、小学4年生以上は「センター校」(市内小・中学校8校)に日本語・適応指導教室を開設するなどのサポートを行っている。これらのセンター校では母語保持の取り組みも行われている。
2009年度新規事業として、「外国籍住民のコミュニティ生活意識実態調査」、「区における多文化共生支援事業」を紹介する。外国籍住民が多い東成区と平野区で、コミュニティ形成に外国籍住民がどのように関わっているのかアンケート、インタビュー調査を行っており、その結果をまとめている。また、区役所と外国籍住民、NPOなど地域住民が協働して地域防災、国際理解・交流、生活支援などのテーマで多文化共生支援事業(5事業)が行われている。
課題として、外国籍住民の生活実態など実情をより詳細に把握していくことや、歴史的経緯を有している韓国・朝鮮籍住民が多く在住しているまちであることを踏まえて啓発の取り組みを進めていく必要がある。また、地域社会で住民だれもが力を発揮し、あるいは地域の発展に貢献するために、外国籍住民にとっても参加しやすい地域コミュニティを築いていく必要がある。さらに、この分野で市民団体と企業・行政の連携を図ることが求められる。
本市では「アジア交流圏の拠点として都市の活気にあふれる大阪」「人が集まり、育ち、新しいものを生み出す大阪」「暮らしたい、訪れたい、魅力あふれる大阪」をめざすべき都市像としており、今後とも、住みやすいまち、住んでよかったまちと感じられるよう取り組みを進めていきたい。