ヒューライツ大阪からのお知らせ
ヒューライツ大阪は2010年10月3日、世界人権問題研究センター、ジェンダー法学会、ヒューマンライツナウ関西と、シャムシア・アフマッド元女性差別撤廃委員を迎えた講演会を立命館大学朱雀キャンパスで共催しました。
アフマッドさんは、「女性差別撤廃条約の意義とインパクト、そして日本における条約の国内実施を促進する市民の役割」と題して、条約批准によって日本が受け入れた義務やその義務の履行を促進し、モニターする市民の役割について話しました。女性差別撤廃条約の締約国になることによって、日本は女性の人権を実際的に尊重、保護、充足することにコミットしました。そのためには女性が人権を享有できるようエンパワーされなければなりません。また、条約の実施に関して、国内機構をつくり、実施の進展をモニター・評価し、その成果を条約で求められる女性差別撤廃委員会に対する定期報告だけでなく、市民にも報告する必要があります。
一方、市民も個人であれ、組織としてであれ、条約が締約国に課す義務や保障する権利について十分理解し、政府に実施のための取り組みを促進、支援する役割があるとして、アフマッドさんはインドネシアでの女性運動の経験をもとに、単に政府に反対するだけでなく、ジェンダー格差を示すデータやその分析を活用して説得したり、対案を示すなどの例を挙げて説明しました。また、市民団体も政治に関わっていくことも重要であることを指摘しました。
アフマッドさんの講演に続いて、国際人権 NGO のヒューマンライツナウの「女性に対する暴力プロジェクトチーム」が3月に行った、カンボジアのドメスティック・バイオレンス防止と被害者保護に関する法律の実施に関する調査について報告がありました。報告では、05年に制定され、翌年施行の同法の目的が、暴力の防止だけでなく、伝統や家庭内の調和の促進を含んでおり、被害者の保護ではなく、離婚の抑制に働くおそれがあること、暴力の防止のために介入する権限のある機関が明確になっていないことのほか、施行のためのガイドラインや保護命令の発令手続の制定や実施が遅れていること、地域によって実施の格差があること、当局側にも、法律の保護を受ける人の側にも情報不足があることなどの課題が指摘され、その改善のための法律の条文や手続に関する提言も紹介されました。
(構成・岡田仁子)