MENU

ヒューライツ大阪は
国際人権情報の
交流ハブをめざします

  1. TOP
  2. 資料館
  3. 国際人権ひろば
  4. 国際人権ひろば No.98(2011年07月発行号)
  5. アジアとメインストリーム協会の関わり

国際人権ひろば サイト内検索

 

Powered by Google


国際人権ひろば Archives


国際人権ひろば No.98(2011年07月発行号)

肌で感じたアジア・太平洋

アジアとメインストリーム協会の関わり

藤原 勝也(ふじわら かつや)
メインストリーム協会

はじめに

 本題に入る前に、理解しておくべき大切なことがある。
 それはメインストリーム協会がどんなところで、どんな活動をしているかである。
 メインストリーム協会は、1989年に兵庫県西宮市で設立されて以来、20年以上にわたって、重度障害者の地域での自立生活をサポートしてきた。全国に120ヶ所くらいある自立生活センターのひとつである。自立生活センターは障害当事者が運営を行い、どんな重い障害があっても普通の人と同じように地域で暮らせる社会をつくることを目指している運動団体である。
 その役割は、「サービスの提供」、「権利擁護活動」、「障害者観を変える」等である。
・「サービスの提供」とは介助者派遣、カウンセリング、相談支援等である。
・「権利擁護活動」は介助制度やバリアフリーに関して市役所や公共交通機関等と交渉を行って、介助制度の充実やバリアフリー化を進めていくことである。実際に西宮市の介助制度の充実、バスの乗務員の対応の向上等につながった。重度障害者の生活に直結する重要な活動である。
・「障害者観を変えること」とは一般的に障害といえばかわいそうとか何もできないというイメージがあるが、講演やイベント等で障害のイメージを変えていくことである。また、自立生活センターは障害当事者が働くモデルの場であり、職場のサポートがしっかりと整っていれば重い障害があっても働けることを社会に示している。
 私たちの考える自立生活とは障害当事者が障害のない人と同じように自分の生活や人生を決めて生活していくことである。長い間障害者は施設や親元で生活してきた。そこでの生活はほとんど施設や親の都合で決められたものである。例えば決められた時間に寝かされたり、好きなときに外出できなかったりする。障害がない人であれば、そういう生活が強いられることはありえない。そして、私たちの考える自立とは、身の回りのことが自力でできるとかお金を稼いでくるとかではなく、自分の生活や人生を自分で選んで決めていくことである。当然そこには責任も生じる。 

メインストリーム協会とアジアの出会い

 メインストリーム協会がアジアの障害者とつながって12年が過ぎた。
 きっかけはダスキンアジア太平洋障害者リーダー養成研修の研修生を受け入れることになったことだ。それ以来、毎年各地から研修生を受け入れ、仲間の輪が広がっている。ここでの研修の目的は、日本の自立生活運動、福祉制度、メインストリーム協会の活動などを学び、体験し、帰国後の活動に生かすことだ。
 そして、帰国後自立生活センターの活動を始める研修生があらわれた。2003年にパキスタン初の自立生活センターが誕生して以来、現在までに韓国、ネパール、台湾、カンボジア、モンゴルで設立された。
 今ではそれら6つのセンターとメインストリーム協会および大阪のセンター(自立生活夢宙センター&ぱあとなぁ)とで次に説明する「KOKOROZASHI International 」というネットワークを築いている。障害があっても堂々と生きていける社会を作るという同じ志を持った仲間の集まりである。 

「KOKOROZASHI International」とは

 「KOKOROZASHI International」が結成される以前は、日本の自立生活センターがアジアの自立生活センターをサポートするというかたちであった。アジア諸国の多くでは障害に対する差別や偏見・経済状況が日本以上に厳しく、バリアフリーも制度も何も整っていなくて、自立生活センターが活動していく上では非常に困難であった。自立生活センターの活動は長期にわたって(一生かけて)継続的にやるものなので、同じ志を持って活動している仲間をサポートする必要があった。私たちは、セミナー等の応援のため現地へ繰り返し訪問したり、スタッフ研修を受け入れたり、資金援助を行ったりしている。そんな中、韓国では介助制度ができて、今では自立生活センターの活動が拡大し、特に支援は必要なくなった。
 最初は日本からアジアを支援する、という形であったが、やがて相互が交流し、助け合う、という形に変化した。パキスタンのメンバーがネパールへ話しに行ったり、カンボジアのセミナーへネパールのメンバーが話をしに行ったり、台湾のメンバーが韓国へ介助制度の勉強に行ったり、日本からもスタッフが各地のセンターへ修行の一環として行ったり、さまざまなかたちが生まれてきた。それが「KOKOROZASHI International」である。今では相互に交流し、それぞれの活動を相互に支え合う強固な関係が築かれている。
 私も人工呼吸器を使用している重度障害者であるが、今まで韓国、台湾、カンボジア、モンゴルへ行って来た。そこで私の自立生活やメインストリーム協会の活動を話してきた。

Asia TRY

 「KOKOROZASHI International」の重要な活動のひとつがAsia TRYである。それは、2007年から2年に1度、バリアフリーと自立生活を訴えて、開催しているイベントである。開催地は2007年韓国、2009年台湾、2011年モンゴル(6月26日~7月5日)である。
 そこで中心になるのが開催地のセンター、障害当事者であり、これをきっかけに自立生活センターが広く知られ、自立生活運動の気運を高めることが目的である。それを応援するために、アジア各地から参加するが、その国を変えるのはその国の人なので海外メンバーはあくまでも脇役である。私も2007年に参加した。
 TRYはもともと日本で1986年に、後にメインストリーム協会を設立する廉田俊二が大阪~東京間を国鉄沿いに野宿しながら歩き、鉄道のバリアフリー化を訴えたことから始まった。その年以来、約10年間日本各地を練り歩いた。日本での最後のTRYは2000年に復活した時だった。福岡~東京間1200キロを2ヶ月以上かけて歩いた。バリアフリー法が制定され、鉄道のバリアフリー化が進む今、日本でのTRYの役割は一定の区切りをむかえた。
 2001年にTRYは海を渡った。初の海外TRY、日韓TRYであった。きっかけはその当時の韓国の研修生が日本でその話を聞いて、是非自分の国でもやりたいと強く思ったからだ。ちょうど2002年の日韓共催のワールドカップの前年だったので、日本と韓国のメンバーが一緒になって、鉄道とスタジアムのバリアフリーを訴えて釜山~ソウル間500キロを歩くことになった。実は私が始めて参加したTRYでもあった。2週間以上韓国を歩き、言葉の壁を越えて、共に泣いて笑って過ごせた日々は貴重な経験だった。
 TRYの大事なところは、障害、性別、国籍に関係なく一丸となって仲間とともに楽しみながら運動していく事である。それは今も昔も変わりない。 

最後に

 なぜ私たちはアジアと関わりを持つのか、それは国、地域、人種、宗教の違いがあるが、障害者が堂々と生きていける社会を作るという同じ志を持つ仲間と共に、アジアを変えていきたいからである。

メインストリーム協会
〒662-0844 兵庫県西宮市西福町9-3
TEL 0798-66-5122 FAX 0798-66-5133
ウェブサイト http://www.cilmsa.com/

ネパールの仲間とのゴール前日の再会(左端が筆者)

2007 Asia TRY in Korea
ネパールの仲間とのゴール前日の再会(左端が筆者)
 

モンゴル自立生活セミナー最終日 みんなで街頭アピール

モンゴル自立生活セミナー最終日 みんなで街頭アピール