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国際人権ひろば No.100(2011年11月発行号)

特集1 韓国スタディツアー「女性のエンパワメントのためのプサン&ソウルへの旅」

アクティビスト、研究者、財団職員の出会い(ソウル編)

仁科 あゆ美(にしな あゆみ)
財団法人大阪府男女共同参画推進財団 統括ディレクター

ソウル女性・家族財団

 ソウル女性・家族財団は、2002年「ソウル女性プラザ」開館時に設立された組織である。2006年にはドーンセンター(現:大阪府立男女共同参画・青少年センター)を運営する当財団と友好協約を締結、翌2007年は大阪に招へいし、共同事業を行った。建設時に視察に来られたこともあり、同プラザとドーンセンターはガラス張りで曲線を描く建物外観が似ている。同じ理念を持つ団体としても、とても身近に感じていた。
 あれから4年。久しぶりの訪問となった。
 ソウル女性・家族財団は、ソウル市女性政策に関する研究機関的位置づけで、調査研究を中心にさまざまな事業を実施し、研究結果を市長に政策提言する機能を担っている。多くのスタッフが研究職で、今後も研究に力を入れるという。
 日本の男女共同参画センターは、講座や相談などに寄せられる市民の声を収集・分析し行政に提言する役割を持つが、啓発が主要事業で、調査研究を行っているところは少ない。そんな意味でも大変興味深く思った。

女幸(ヨヘン)プロジェクト

 その代表的なのものは「女幸プロジェクト」。女性が都市生活で経験する3つの“不”、つまり不安、不快、不便の要因を解消すべく、ソウル市のさまざまな都市政策が女性の視点で進められている。建築、環境、文化、交通など50分野90事業で、「女幸トイレ」「女幸駐車場」「女幸道」などの生活に密着したプロジェクトを展開し、ジェンダー平等なソウル市を創造していく。2007年から始まり確実に成果を挙げてきた。
 国際的にも評価され、2010年から2年連続で国連公共行政大賞を受賞。女性の視点で都市空間を創る、まさに空間とジェンダーに関する先駆的な取り組みである。

女性起業家支援プロジェクト

 同プラザ内のロビーには、アクセサリー、洋服、韓国の伝統的な小物、生花等が販売されていた。これらは女性起業家支援事業の一環で、館内に40人が出店。ワゴンに品物を乗せた簡易な店だが、見やすく買い求めやすい。会話を楽しみながら買い物ができる。
 1年に3回の企画コンペで採択され、同プラザ内に出店。期間は4カ月。賃料はゼロ。起業家たちは、顧客ニーズの把握、仕入れの仕方や販売方法などを訓練し、経営スキルを学ぶ。これらの店は市内中心部のデパートなどに比べ値段が安いうえに品質も良いので、来館者やスタッフにも大好評とのことだった。
 


ソウル女性プラザで女性のビジネスを支援

聖公会(ソンゴンフェ)大学NGO大学院・実践女性学コース

 実践女性学コースは、女性アクティビストが理論を学ぶ場として2007年に設置された。企業からの奨学金制度も整っている。夜の授業で女性学の理論を学び、昼間はそれぞれの活動を行う。
 同大学と大阪府立大学女性学研究センターとの共催で、「韓国と日本における草の根の女性運動の現状と課題」ワークショップが開催された。日本側からは、「ドーンセンターから見える大阪の女性運動」として、私がドーンセンター設立までの女性運動と現在の女性たちの活動紹介を、また大阪府立大学大学院の伊藤良子さんが「日本の性暴力被害者相談とその課題」として、内閣府の24時間DV被害者電話相談・パープルホットラインの取り組みなどについて報告。そして伊田久美子大阪府立大学教授が「女性の活動をつなぐネットワークの構築と運営~ウィメンズ・アクション・ネットワークから」と題し、インターネットによるさまざまな女性運動のネットワークについて報告をした。
 同大学からは「テジョン女民会の挑戦と開発」「障がいをもつ女性のための性暴力相談」「韓国におけるオンラインフェミニズム運動」についての報告があった。保守的な地域でのジェンダー政策の進め方、インターネットを活用した次世代の女性運動などについて活発な意見交換や交流ができた。
 


聖公会大学でのワークショップで報告する筆者

私の役割を再確認

 「私たちはアクティビストです。社会を変えるためには、政治に参画していかなければ。韓国では地域で活動している女性アクティビストが政治参画する(選挙に立候補する)のは自然なことです」。
 ある韓国女性がはっきりと言った。既存社会に、フェミニズムの視点・価値を提案、新しい社会づくりを進めていく女性アクティビストたち。ツアー最終日、アクティビストの本来の意味を考え、私自身の役割を再確認して旅を終えた。