ヒューライツ大阪からのお知らせ
今日、「企業と人権」あるいは「CSRと人権」をめぐる議論において、ジョン・ラギーの仕事を欠かすことはできない。国連グローバル・コンパクトの設立にも大きな影響を及ぼした後、2005年に「企業と人権」に関する国連事務総長特別代表に就任したジョン・ラギー・ハーバード大学教授は、「企業と人権」に関する枠組みづくりに尽力し、「人権侵害から保護する国家の義務」「人権を尊重する企業の責任」「人権侵害からの救済手段の重要性」という「保護・尊重・救済(protect / respect / remedy)」の枠組みを定式化するに至った。この枠組みが、2010年11月に発行されたISO26000の「人権」部分にも大きな影響を及ぼしたことは広く知られている。
そのラギーが枠組み形成に向けてまとめ上げたレポートが、「保護、尊重、救済:『企業活動と人権』についての基本的考え方(Framework for Business and Human Rights)」(2008年)と、「ビジネスと人権に関する指導原則(Guiding Prin-ciples on Business and Human Rights)」(2011年)である。一般に「ラギー・レポート」または「ラギー・フレームワーク」と総称されている。
2008年の“Framework”はすでに日本語訳があるが*、2011年の“Guiding Principles”について、今回、ヒューライツ大阪とサステナビリティ日本フォーラムによる合同日本語訳が完成するに至った。「保護、尊重、救済」の枠組みが、31の「原則」に整理されて提示されており、企業が人権尊重の責任を果たすために不可欠のプロセスである人権デューディリジェンスについても、具体的手順が詳細に示されている。
国連の公式文書であり、すべての人に参照され取り組みのよりどころとされるべきものである。ヒューライツ大阪でも、近々ウェブサイトにこの“Guiding Principles”の日本語訳を掲載する予定である。「企業と人権」の世界標準となりつつあるこの枠組みをぜひ直接お読みいただき、それぞれの取り組みに生かしていただきたい。
*「経済セミナー」2009年1月号及び2/3月号に所収(雨宮寛、今井章子訳)。