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国際人権ひろば No.106(2012年11月発行号)
特集 韓国スタディツアー 地域に学ぶエンパワメントと参加・木浦&ソウルへの旅
出会ったみなさんからエンパワー -自分らしくいこう
滝石 麻衣子(たきいし まいこ)
三重県男女共同参画センター「フレンチみえ」
台風とともに韓国へ。私は何かと大事な時に台風とバッティングすることが多いので、今回も引き寄せてしまったのでは…と申し訳なさを勝手に抱いての旅の始まりであった。
充実していた全南女性プラザの施設
三重県の男女共同参画センターに勤めているので、韓国の女性センターの取組みやスタッフの「おもい」に関心を持っていた。
全南(チョンナム)女性プラザは、韓国南西部の広域自治体、全羅南道(全南)が条例で設置した地域の女性センターである。木浦訪問の2日間はここで宿泊した。
2009年4月に開館した新しい施設で、充実した宿泊付きの研修室、ライブラリーカフェ、全南女性文化博物館も施設内にあるなど、こんな女性センターがほしい!と思った。ただし交通アクセスが不便なため市民が利用しづらいようで、それはとてももったいない…。
全南女性文化博物館
博物館では、資料が工夫を凝らして展示され、予算をかけているという印象を受けた。そのように女性関連の資料が大切に保存され、市民が気軽に触れられるような取組が、これまでの女性の歴史、活動を埋もれさせず、それらを大事にしながら今どう取り組むべきかを考える施設の姿勢のあらわれだろうと感じた。
全南女性プラザの設立目的として「未来を拓く女性の人材開発と地域社会発展にバランスと調和をなす両性平等文化を実現する」が掲げられ、「女性政策の開発」「女性の能力開発」「両性平等文化の拡がり」「女性のネットワークの強化」を基本方向としてすすめている。地域住民と一緒にセンターを運営するという方針もあった。
具体的な事業として、地域の産業のほとんどが農業・漁業中心であるという特色に沿った女性政策研究、起業支援サービス、教育プログラム開発に取り組んでいるとのことだ。
特に私が関心をもった点は、女性政策の研究と、地域住民との協働である。政策推進のための研究機能があるということは、女性プラザが男女平等施策推進の拠点として行政的に明確に位置づけられていると感じた。「地域住民との協働」については詳しく話を聞けなかった。後から訪問した「木浦女性連帯」の話から、木浦の地域の女性団体と、このプラザとのつながりは薄いように感じた。
私は、男女共同参画センターでの取組みを広めるために、行政だけでなく女性団体をはじめ、様々な主体との連携がとても大事だと感じている。と同時に、性格や規模の違う諸団体が、対等な関係で同じ目的に向かって物事を進めていく難しさもある。連携・協働関係の構築には、積極的な誘いかけと信頼関係を作るエネルギーをたくさん投入することが大事だろうと再確認をした。
「連帯」の力強さ
スタディツアーでは、韓国でも日本でも、性暴力被害を受けた女性の置かれる状況から、社会の中で女性が弱い立場に置かれるケースがいまだに多いことを、ひしひしと感じた。ジェンダーの視点を持った相談者・代弁者の重要性や、寄り添いながらエンパワメントにつなげる支援のあり方についてよく考える機会となった。
出会った女性団体から共通して感じたことは「連帯」の力強さである。みんなが主体の対等な関係で連帯し行動することで、本当に大きな力になるということだ。
また、国は違っても同じ課題意識を持ち、問題解決に向けて考え合うことこそ、韓国と日本の女性の連帯なのだとも感じた。
韓国で出会った女性たち、また日本からご一緒した人たちから、女性支援に取り組む熱意や姿勢を学び、エンパワメントを促進する仕事に就く者としてどうあるべきかを考える機会になった。何よりも出会った皆さんが、「自分」を生きているように感じた。他人に合わせがちだった私が、「自分らしくいこう」と感じたことが一番の自分のエンパワメントになったように思う。
「全南女性プラザ」との交流会