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国際人権ひろば No.114(2014年03月発行号)
ヒューライツ大阪のお知らせ
第21回「ワン・ワールド・フェスティバル」に参加
2014年で21回目を数えた「ワン・ワールド・フェスティバル」が2月1日(土)と2日(日)に大阪国際交流センターで開催されました。このフェスティバルは、おもに関西をベースに国際協力に携わっているNGOをはじめ、国際機関、政府機関、教育機関、企業などが協力して毎年大阪で開いている国際協力祭りです。
会場では141団体が活動紹介のブースと民族料理模擬店を出展したり、セミナーや講演・上映会など73のプログラムが実施され、2日間で述べ約17,500人が来場しました。
ヒューライツ大阪は、例年同様に「フェスティバル実行委員会」のメンバー団体として準備段階から参画するとともに、活動紹介のブースを出展しました。
2日には、反差別国際運動(IMADR)との協力で企画したセミナー「ヘイトスピーチってなに?‐共生社会を求めて」を開催し、『ネットと愛国‐在特会の『闇』を追いかけて』などの著作で知られる安田浩一さん(ジャーナリスト)を講師として招きました。また、関西でヘイトスピーチに対抗する活動に関わる人たちの報告や、参加者との質疑応答などを行いました。参加者は約100人でした。安田さんの講演の概要は以下の通りです。
講演する安田浩一さん
「ヘイトスピーチってなに?‐共生社会を求めて」:安田浩一さんの講演
日本の厳しい労働現場の多くは外国人労働者に支えられている。極端な低賃金で早朝から夜遅くまで劣悪な労働・住環境で働く外国人技能実習生のケースを私は2006年頃取材していた。オーバーステイとなった中国人男性が警察に追いかけられ、もみ合う打ちに威嚇発砲もなく撃たれて死亡するという事件が起きた。遺族が損害賠償を求め提訴した。初公判の日に傍聴に行くと裁判所周辺で日本国旗を持ち、「悪質なシナ人は殺せ」などと叫ぶ普通の格好をした人たちがいた。インターネットの「2チャンネル」で呼びかけ集まった人たちのようだった。笑いながら殺せと叫ぶ姿は気持ち悪く怖かった。何を目的にそこまで人を攻撃できるのか知りたくて、私は取材を始めていった。
その翌年の2007年に「在日特権を許さない市民の会」(在特会)が結成された。「在日コリアンには特権がある」と主張する彼らの言い分はどれひとつとっても間違っていた。だが、それを鵜呑みにして会員になる人々がいた。彼ら・彼女らは戦後民主主義の価値観に反発し、人権や戦争放棄、日本国憲法などに反発している。メンバーは中学生から高齢者まで様々な世代で構成されている。
「在特会」は特殊な存在ではあるが、同時に排外主義の空気が日本社会に漂っている。それが如実に表れているのが電車の吊り革広告だ。週刊誌の広告には連日のように、中国と韓国を批判し日本が偉いといった文言が列挙されている。
在日コリアンへの嫌悪や反感は過去からあった。関東大震災では多数の在日朝鮮人が日本人に殺された。「在特会」の活動が目新しいのはネットで呼びかけ街頭で憎悪を叫んでいることだ。優越感に浸りながら他者を嘲笑し罵倒するといったヘイトスピーチは差別に満ちている。
貧困や格差問題に関心のある青年がヘイトスピーチにふれて感動する。「年間の自殺者が3万人、経済を理由に2万人が自死を選ぶのは在日が特権をもち優先的に生活保護を与えられているから」と聞き、街頭で拡声器片手に自ら初めて叫んだ。マイクを持った瞬間、高揚感を得たという。「奪われたものを取り返すため」という「正義感」から活動を続けている人が多い。
在日コリアンへの生活保護や年金の「優遇」は明らかにウソである。ウソだとわかっているメンバーもいるが憎悪を広めるために主張している。悲しいのは、そのようなことを煽る連中がネットに書き込み、それを鵜呑みにし、自分たちが被害者であると思う人がいることだ。そこに韓国に対する反発が入り交じり、いまのような運動になっているのだ。
問われているのは日本人
ヘイトスピーチは憎悪表現ではあるがそれがすべてではない。性別や国籍、民族といった属性を誹謗、中傷、攻撃する行為なのである。それを取り締まる法規制が必要という声がある。一方、法規制すると「表現の自由」が奪われると反対する人もいる。だが、単なる表現だといえるのか。在日コリアンが何かを発言すると「死ね」、「殺せ」と浴びせかけられる。沈黙が強いられ、表現の自由が奪われているのだ。そのような事態を野放しにしてよいのか。そこから考えるべきではないか。
格差と貧困を広げつつある社会の中でマイノリティに敵意が向けられインターネットや街頭で拡散されている。
同時に、国や行政によるレイシズム(人種主義)もある。朝鮮学校だけ高校無償化法から除外されている。東京都町田市は市内に住む全児童へ防犯ブザーを配布する際、朝鮮学校に通う子どもだけ排除するという方針を出し批判を受けた。
「ヘイトスピーチ」という問題に関して、問われているのは在日コリアンではなく、日本人の私たちだ。