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国際人権ひろば No.120(2015年03月発行号)
特集 ヒューライツ大阪20周年を迎えて
病院にいる子どもの遊ぶ権利
プレイライトは、子どもの遊ぶ権利について取り組む慈善団体である。遊ぶことは子どもの発達に不可欠な要素であり、私たちは香港を、子どもの遊ぶ権利を尊重し、保護し、充足する社会にしたいと考えている。
遊ぶことは当然のことと思ってはならない。特に病院の子どもにとって、遊ぶ機会もアクセスも限られている。そのような中でプレイライトは、病院にいる子どもに遊びを提供するサービスを実施して20年になる。香港にある11の公立病院のうち5つの公立病院で様々な病気を抱えた子どもたちにこのサービスを実施している。
なぜ遊ぶことが必要なのだろうか。入院とは特に子どもにとってストレスの多い、恐ろしい経験である。ある研究によると、入院して最初の24時間で子どもは知らない大人約50人と接触する。そのほかにも日常生活が大きく変わってしまう。遊びを通して、フラストレーションのはけ口をつくり、子どもの否定的な感情や不安感が軽減され、子どもの回復やリハビリテーションが早くなる。
治療について、子どもが理解し、準備する遊びもある。専門家たちが遊びでおもちゃを使い、こういう治療をするんだよ、と説明する。MRIなど実際の器具を使い、子どもたちが処置についてわかるようになる。
子どもたちの気を紛らすために遊びを使うこともある。たとえば、採血処置で、医師が処置をしている間、遊びの専門家が子どもと遊ぶ。本を読んであげたり、ビデオを見たり、ボード・ゲームをしたり、子どもが小さい場合は、触って音が出るおもちゃを使ったりして、遊んでいる間に処置が終わっているのである。
また、医療機器やテーマを使った遊びもある。この遊びを通して怒りや不安を取り除き、大人が、子どもがどう反応しているのかを理解することもできる。この遊びで人気があるのは、病院ごっこであるが、ドクターや看護師に比べて、患者の役は人気がない。子どもが親しみをもちやすいように、医療機器や器具がおもちゃに変身するのである。
治療の間、子どもはさまざまな感情を抱くが、言葉で伝えられない感情を、絵を描くなどして表現する遊びもある。
最後に、子どもの発育を促進する遊びがある。子どもなので、治療の面だけでなく、遊ぶこと自体が重要であり、通常の発育を促すために必要である。病気を忘れて、おもしろいということが必要である。
これらの遊びのほか、慢性疾患のある子どもたちに遊ぶ機会を増やし、屋外を楽しめるようなアウトリーチのプログラムも用意している。
また、新たな取り組みとして、プレイライト・チャンネルを開始した。重症急性呼吸器症候群(SARS)が香港で発生した際、患者が隔離され、ボランティアが病院に入り子どもたちのところに行くことができなくなった時期があったが、私たちはテレビ番組をつくり、隔離病棟にいる子どもたちとチャンネルを通じてつながるようにした。
遊びは不可欠なものではないとされているが、私たちはこれを必須のものであるというように考え方を変えたい。そのためには、知識や経験を医療従事者と共有することや、一般社会に対する意識の啓発が重要だと考えている。そのために医師、看護師やボランティアを対象にセミナーや研修を行っている。また子どもの遊ぶ権利を世界各地にも広めようと国際的な連携も行っているのである。