ヒューライツ大阪は
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国際人権ひろば No.120(2015年03月発行号)
特集 ヒューライツ大阪20周年を迎えて
ワークショップ「人権センターの役割を見直す」
12月13日、ヒューライツ大阪は、人権センターの活動や取り組みを通して、その役割を見直し、今後の活動の課題や可能性を考える、ワークショップ「人権センターの役割を見直す」を開催した。カンボジア、フィリピン、日本から人権団体、研究者など13人が参加して、人権センターをめぐる状況などについて話しあった。
アジア・太平洋地域で活動する人権センター
ヒューライツ大阪のジェフ・プランティリア主任研究員は、ヒューライツ大阪で2008年と2013年に制作した「アジア・太平洋地域の人権センター・ディレクトリー」(一覧)をもとに、人権センターを「人権に関連する情報の収集、発信に取り組む組織」と定義し、NGO、大学に拠点を置くセンター、政府関連のセンターに分類されることを確認した。ディレクトリーにあげられたセンターでは、1951年に設立されたインドの社会研究所が最も古く、その後、1980年代、1990年代前半と地域各地で人権センターが設立され、さまざまな活動が行われていることを報告した。
侵害の記録の保存、活用
カンボジア・ドキュメンテーション・センタ―のディ・カンボリさんは、1975年から1979年までの間、処刑、拷問、強制労働、飢餓などにより2百万人が殺害されたクメール・ルージュ時代に関して、同センターが文書、写真、インタビューなどの資料を集め、その資料を活用して啓発、教育に活用する取り組みを行っていることを報告した。クメール・ルージュ政権によるジェノサイドの調査のための、米国の大学の現地機関として1994年設立され、その後独立して、資料の収集、整理、保存を行っている。その資料は調査・研究に開放されるほか、ジェノサイド教育に活用する取り組みが進められている。同センターはクメール・ルージュ時代に関する歴史の教科書を作成し、それを学校のカリキュラムに取入れるよう働きかけ、一方で教員が教科書を活用できるよう、研修を行い、2011年にはその教科書がカリキュラムのなかで取りあげられることになったと報告した。
コミュニティでの活動
「心理社会的支援および子どもの権利リソースセンター」のアグネス・カマチョさんは災害に遭ったコミュニティの子どもへの心理的支援として、2004年、2週間の間に連続して4つもの台風に遭ったフィリピンのオーロラ州ディンガランで行った、子どもへの心理社会的支援について報告した。プロジェクトの説明によると、まず現地に入り、コミュニティの大人だけでなく、子どもも対象に聞き取りを行い、コミュニティが企画や評価においても関わることができるよう進めた。支援の現場に入るときには、自分たちのプログラムをそのままもっていくのではなく、そのコミュニティにどのような組織があるのか、資源があるのかを見て、そこからつくりあげていく。この場合も、教会など現地のパートナーと協力して実施したと述べた。
カマチョさんは、このプロジェクトでは、子どもや若ものが実施のあらゆる段階で参加し、また女性や女の子の積極的参加も促すことができた一方、子どもの意見を聴くということについて、まだ否定的な考えが一般的であること、子どもの参加について、形式的ではない、実質的な参加を確保することが困難であるなどの課題もあることを指摘した。
地方自治体との取組
公益社団法人鳥取県人権文化センター次長の尾崎真理子さんは、県、県内の市町村や民間団体によって設立された同センターの、地方自治体と二人三脚で行われる県内の人権啓発活動について報告した。報告によると、センターの事業費の大半は県と市町村で負担され、県はスタッフの派遣も行うなど、自治体と密接な関係にある。
鳥取県の全市町村では、人権尊重に関する条例がつくられ、担当課には人権教育推進員が配置されている。そのようななかで行われる鳥取県の人権啓発は行政主導といわれるが、多くの市町村では集落毎に開催される住民学習会に加えて、各市町村が行う連続講座、研究集会、啓発イベントなど、多様な学習の機会が用意されている。センターはそのような自治体の取り組みに対して、講師派遣やプログラムの企画などの支援を行っている。課題として、高齢化と過疎化が進んだ地域では、集落毎の学習会開催が困難になってきていること、学習会で学んだことは人権問題と認識するが、自ら問題に気づく力をもっと養う必要があることなどがあげられる。今後は、地域の人権保障につながるような交流活動を住民や様々な団体が協働で行い、そのプロセスのなかで人権を考えていくような取り組みが考えられることがあげられた。
人権に関する資料の活用と人権教育・啓発
プランティリア主任研究員は、人権教育・啓発が人権促進を行う人権センターの役割の重要な要素であると述べ、人権センターは様々な形の教育や啓発に適した情報を提供しなければならないとして、ヒューライツ大阪が出版やその他の活動を通して、そのような情報提供を行っていることを紹介した。
その他にもこのワークショップのなかででてきた人権センターの役割として、コミュニティでの活動でみられたように、コミュニティの人が声をあげる、学界との連携を行うなどの「場」をつくるということ、人権と他の問題と結びつけるなどがあることを指摘し、一般の住民にとって人権問題がどう関連しているのか、人権センターが発信していく必要があると述べた。
(編集部)