現代国際人権考
二十一世紀をすべての人が人間らしく生きられる世界にするために、まず二十世紀が生み出した十億人を超える貧困を根絶しなければならない。貧困の最大の原因の一つは、途上国が抱えている巨額の債務である。貧しい国の人々は飢餓に苦しみ、子どもたちの三人に一人は栄養失調で満三歳までに死亡している。最貧国では、人々が飢餓や病気で亡くなっている一方で、債務返済のために医療や教育に十分なお金が使えないでいる。アフリカの年間の債務返済は国家予算の三〇%にも上り、医療予算の二倍に達している。
アジアの重債務諸国は、新しい債務を求めるための資本に不足しており、IMF(国際通貨基金)や世界銀行の政策の下で、保健や公衆衛生、安全な飲料水、教育などの社会的ニーズよりも債務返済を優先させることを余儀なくされている。独自の資源が発展途上の債務国にいる貧しくされた人々から富裕な西洋の債権国へと持っていかれるのは、基本的人権の侵害である。重度の債務と経済危機によって、民族紛争や内戦といった社会の紛争や分裂が起きている国々もある。
「ジュビリー二〇〇〇債務帳消し」の運動は、一九九○年に始まり、現在、世界七十ヵ国に存在するほど世界的な広がりとなった。日本では一九九八年十月に宗教界(キリスト教)、労働界が核になって、「ジュビリー二〇〇〇日本実行委員会」が組織された。同委員会による沖縄会議が去る七月十九日から二十一日まで沖縄サミットと並行して那覇市のバレット市民劇場で開催された。開会行事には、ボランティアも含め約三百人が参加した。カトリック教会の白柳誠一・同委員会共同代表は、「沖縄会議は参加団体の幅の広さと参加国の多さが特徴。各国・各団体が明るい未来を信じて運動を進めよう」とあいさつ。地元からは、玉城清・連合沖縄会長が、「基地の重圧を受ける沖縄で、重い債務の問題を考える会議が開かれることは歴史的にも国際的にも重要な意味がある」と述べた。
さて、沖縄サミットの後、何が重要な課題であるか。第一に、昨年六月のケルン・サミットでG7が公約した「重債務貧困国の債務帳消し」は、一〇%ぐらいしか実行されていない。一方、日本への借款の回収金は三、七四八億円もあるといわれている。 したがって、どの債務が支払われているのか、不当に取り立てていないかを認定し、さらには累積利子分の適切な減額方法を決定できる中立的な仲裁機関が必要である。
第二に、返済不可能な債務、言い換えれば、人間の尊厳を保障する基本的ニーズまでをも人々から奪うことによって支払われる債務はすべて帳消しにすべきである。子どもの命を代償として返済される債務は不公正であり、人権の侵害である。 「債務帳消し」運動はあくまでも貧困に喘ぐ人々を解放することが中心でなければならない。