現代国際人権考
ヒューライツ大阪のニュースレターの巻頭を飾るこの「現代国際人権考」は、代々その道の権威が健筆をふるい鋭い問題提起を続けておられるだけに、今回の事務局からの原稿依頼は人権問題の専門家や学者でもない私にとって、率直にいってかなりのプレッシャーでした。従いまして、何を書くか相当迷いましたがいずれにせよ難しい事を書ける訳も無く、結局日頃身近に感じているあれこれを記すことにしました。ご寛容のほどお願いいたします。
まず第一は国際都市を標榜する大都会大阪における人種差別の体験です。実は私の身近な女性が西アフリカのガンビア人と結婚することになり、大阪市北区で住居を探し、不動産屋を通じて手頃なマンションを見つけました。しかし、契約金も支払って、いざ入居という段階で家主が入居者が黒人である事を知り、「黒人は絶対に駄目。訴えられてもいい」と嘯き契約破棄を通告してきたのです。仲介の不動産屋も困ったようですが、ただ申し訳ないの一点張りで埒があかないため、本人たちはもちろん私達周辺も大変怒りましたが、争っている時間は無く、止むなく別を探し入居しました。色々聞いてみるとこのようなケースはかなりあるようで、ペット禁止とは根源的に異なる重大な問題であります。同じ大阪人として恥ずかしく思うと同時に、単に大阪にとどまらずわが国全体の問題として、こうした事態の根絶への取り組みを強化することが必要だと考えます。
次に今日、企業内・職場で日常茶飯事的に起っている様々な差別あるいは人権侵害です。男女差別は言うに及ばず最近では同じ女性の中でも正規社員とパート、派遣、契約等いわゆる非正規社員(この言い方は好きではありませんが・・)の間にも相当の格差・差別があります。もちろん様々な法律の制定や拡充によってセクハラをはじめ幾つかの事例が表面化し、改善・解決への手立てもとられていますが、あくまでも氷山の一角であり、社会全般としての解決にはまだまだ程遠い状況ではないでしょうか。
いずれにせよこれらの問題は、今クローズアップされている「人種差別撤廃委員会」を始めとする国連の条約監視機関において日本政府報告書に対する「最終所見」(懸念事項・勧告)でとりあげられ国際的な批判を浴びています。
しかし、様々な制限や罰則の強化もさることながら子どもの頃からの教育の重要性は論を待ちません。今地球規模で問題になっている環境問題も、環境先進国と言われるドイツでは小学生の時から学用品をはじめとする持ち物もいわゆる環境に優しいものに限定し、また深夜に森に連れて行き自然との対話を体験させているそうです。現在当センターでは「学校における人権教育」のあり方に取り組んでいますが、この際アジアの仲間と共にわが国の状況をさらに深掘し改善・拡充にはずみをつけたいものです。