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国際人権ひろば No.45(2002年09月発行号)

「国際人権わいわいゼミナール」の報告

我が民族の統一のために、私に出来ることは何だろう? 韓国NGO中国事務所員として対北朝鮮援助を経験して考えること

第4回わいわいゼミナール
「中国と朝鮮半島と日本とをつなぐもの-NGOの人道支援活動から考える」

孫 永海 (Sun Yonghai)
大阪産業大学経済学部国際経済学科 研究生

私の人生観を変えた北朝鮮の貧困

 韓国隣人愛会(Good Neighbors International Inc.)(略称はGNI) 中国事務所の職員として 1997年朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮と略す)の黄海南道で洪水被害現場調査と援助物資モニターリングをする機会を得た時、私は自分がすべきことをもう一度検討するようになった。

 痩せてやつれた年寄りたち。国家標準では一日に1人当り450グラムのトウモロコシ粉が配給されるはずなのにそれさえまともになされない現実。通りごとにさまよい飢えてぼろを着ている人、炭鉱から出たばかりのように真っ黒でつるつるする顔をした人たち、揚水機が不足のため、土曜日になると鉢とバケツを持って畑に水をやりに行くピョンヤン市民たち、ピョンヤンへ行く列車の車両の窓にぶら下がって乗客に食物を乞う子どもたち。

 全般的に没落した経済状況の下で、信じ難い苦難を経験している私たち民族のきょうだいたちが私に与えた衝撃は、何とも形容しがたかった。中国の延辺自治州で生まれた朝鮮族として一日も早く統一し、朝鮮半島がひとつになるように最善を尽くすことこそ、私の生きる使命だと考えるようになった。

過去6年間の対北朝鮮援助事業

(1)背景

 93年ソマリア内戦による飢饉と、94年ルワンダ内戦による大量難民の発生などアフリカに対する国際的な緊急救護が要求された時、韓国で最初に緊急救護団を派遣して国連と一緒に活動してきたGNIは、95年3月に北朝鮮で起きた食糧不足による深刻な飢饉に対して、国際NGOとして私たちのきょうだいたちが飢えることを捨ておくことができないと考え、調査を経て対北支援を始めた。

(2)GNIとは?

 韓国隣人愛会は、91年韓国で創立されたキリスト教社会福祉機関で、国内福祉事業と海外最貧国のための人道的救護開発事業を展開している社会福祉法人である。96年、国連経済社会理事会から国内では最初の包括的協議資格を獲得した国連公認NGOだ。97年3月に北朝鮮国連代表部と接触して以降、北朝鮮に直接援助を実施している。

(3)GNIの中国事務所設立

 北朝鮮は、慢性的な凶作よる毎年 250万トンの食糧不足状態に加えて、95年には、7月26日から 8月18日までの集中豪雨でピョンヤンを含めた多くの地域が水害を受けた。実際、産業施設全体の30%が麻痺し、水因性伝染病の流布、農作物病虫害などの被害が続いたため、8月末国連人道局(DHA)及び世界保健機関(WHO)など国際機関に、正式に水害緊急救護と医療団派遣及び食糧支援などを要請するに至った。

 また、新義州では600mm以上の豪雨のため、水豊ダムが氾濫して最低でも5万人の被災者が発生し、広大な農耕地が浸水する事態に至った。

 こうした状況に直面して、本会は同胞愛的な愛の具現と統一基盤造成のために新義州小学生給食事業を実施することを決定して、95年8月中国丹東に韓国隣人愛会丹東支部を開設してパン工場を設置したのである。

(4)主な事業の内訳

(1)緊急救援品支援

事業期間:1995年4月~7月
内容:「平壌市病院新築工事現場用品」として作業服、運動靴、靴下、手袋等を送る。

(2)新義州小学生パン給食

事業期間:1995年8月~96年8月
内容:96年8月まで牛乳と卵を交ぜたパンを毎週約2万個あまり生産し、「平安北道」のナンバープレートをつけた北朝鮮トラックに載せて、陸路で鴨緑江鉄橋を通って新義州の小学生たちのために輸送した。

(3)衣類支援

事業期間:1996年12月
支援物品:衣類10コンテナ (株)イーランド協賛

(4)麺類・トウモロコシ等食料及び肥料・抗生剤・駆虫薬等医療品・農業用ビニール支援

事業期間:1997年3月~1998年7月

(5)酪農開発及び牛乳給食

事業期間:1998年3月~現在まで
内容 : 現在まで支援した乳牛300頭(98年に支援した乳牛200頭及び02年4月に支援した乳牛100頭)と自然増加分を合わせれば、(合計498頭になる)02年度には大安、竜岡、交雑所、救貧里、上院君の乳牛牧場で生産される牛乳は、年間3万人余の子どもたちに毎日200mlを提供することができる。

(6)児童病院支援

事業期間:2001年3月~現在まで
内容 :平壌市児童病院建立の事業に関心を持つ本会を含む韓国の4つの民間団体で構成された代表団が01年3月に訪北し、平壌第2人民病院内において、児童病院支援事業を推進することに合意した。以来、現在に至るまで、医薬品、児童病院改修補修用ペイント等建築資材、医療資機材等を支援している。

(7)育児院支援

事業期間:2000年12月~現在まで
内容:栄養欠乏状態の孤児たちのために、00年から沙里院育児院を始め段階的に支援を始めた本会は、01年3月代表団訪北の時、本会を含めた韓国内4つの民間団体との協力で14の育児院を支援することに合意して、粉ミルク、栄養食、衣類、生活必需品などを支援している。

事業の成果

(1) 初期の単純な食糧支援から多様な開発事業への転換を通じて、自立のための技術指導などを行った結果、自己生産力を高めて根本的に貧困から脱することを目指す支援を行うようになった。

(2) 韓国新聞記者たちが、北朝鮮社会と協力している韓国NGOらの活躍する姿を同行取材して新聞に報道するようになった。さらに、北朝鮮社会を紹介して南北国民が抱いていた敵対感の解消のための記事を書くよう支援し民間交流の活性化を促進した。

(3) 民間外交の役割を発揮して、韓国政府の太陽政策などを北朝鮮に紹介して、かつては想像も出来なかった南北首脳会談が開かれ、金大中大統領の北朝鮮訪問が実現し、朝鮮半島の緊張緩和と平和安定に大きく寄与した。

今後の課題

 GNIひとつの組織力では小さいため、今後積極的に国内外の他のNGOとの協力を図って、北朝鮮の農業、医療等分野の開発事業に取り組んで、北朝鮮経済の発展に貢献し、南北統一基盤の造成のために全力を尽くす、という方針をGNIでは立てている。私は現在、GNIのスタッフを離れ、日本に自費留学していることから、日本のNGOとのネットワークを構築して、GNIのこうした活動に今後も積極的に関わり続けたい。

(※原稿は、筆者が日本語で執筆)