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国際人権ひろば No.45(2002年09月発行号)

Human Interview

ひとりの在日中国人として、 ごく自然体で社会や地域と関わっていきたい

暁 晨 (シャオ チェン) さん
FM CO・CO・LO プログラム・スタッフ

プロフィール:

 中国の杭州出身。上海外国語大学日本語学科卒業。同大学で日本語教員を経て、93年に来日。96年4月以来、FMCO・CO・LOプログラム・スタッフ。現在、中国語番組「華夏之声」(木曜日10:00~11:30)、「関西スコープ」(月・火曜日13:00~15:00)の中国語パート、「Beyond the Border」(月曜日20:00~22:00)の企画や原稿の翻訳、DJなどを担当している。また、イベントの司会やシンポジウムなどにも出演し、幅広く国際交流・理解の活動に関わっている。

聞き手:前川 実(ヒューライツ大阪総括研究員)

前川: 「国際人権ひろば」では5月号以来、FMCO・CO・LOのDJの方をインタビューして、在関西の外国籍市民の元気なメッセージを紹介しています。今回はその3番バッターとして、中国出身の暁晨さんにお話をうかがいます。まず、暁晨さんの日本語やFMCO・CO・LOとの出会いを聞かせてください。

暁晨: 私がかつて勉強した上海外国語大学日本語学科の先輩で、いまもFMCO・CO・LOのプログラム・スタッフを一緒にしている孔怡(コウイ)さんに紹介されたのがきっかけです。FMCO・CO・LOの開局半年後のことでした。

 上海外大の入試では英語学科が一番の人気でした。私も受験した時、第1希望を英語、第2希望を国際メディア論にしました。ところが、届いた合格通知は、日本語学科だったのです。大学に入ると最初は「あいうえお」から始まった日本語の授業が毎日続きました。そのおかげで、3年生で日本語能力試験を受けたところ、私のクラス全員が1級に合格しました。

前川: みんなよく勉強しているのですね。ところで、上海といえば大阪との結びつきも深いですよね。

暁晨: 学生時代にアルバイトで日本語の通訳をしていたとき、大阪のビジネスマンとはよくご一緒しました。大学で習っていると、日本語には遠まわしな表現がずいぶん多かったり、建前と本音という二種類の言葉があるので難しいと感じていたけれど、大阪の人はざっくばらんで接しやすく、親しみを覚えたものです。でも、大阪弁は大学で勉強したのと語尾が違ったりして、言葉のニュアンスをつかむのに苦労しました。CO・CO・LOのリスナーのなかには、大阪弁で書いてくる人もいます。最初、どこで区切って読めばいいのかわからなかったりして、せっかくの大阪弁を台無しにしてしまったこともあります。

前川: いま3つの番組を担当されているようですが、リスナーはどんな人たちですか。

暁晨: すべて生放送なのですが、いずれもリスナーの反応の素早いことに驚いています。例えば神戸の南京町(中華街)の店の情報を流すと、すぐに行ってきたという報告や別の店の情報がリスナーから届くのです。中国や台湾、香港などの音楽を中心に流している「Beyond the Border」のリスナーは30代の日本人女性が多いのですが、みなさん情報が早いですよ。香港の人気歌手の新譜が出たとすれば、まだCO・CO・LOでCDを入手していないうちからリクエストが届いたりします。

前川:中国人のリスナーの反応はどうですか。

暁晨: 木曜日の朝の中国語番組「華夏之声」は、留学生から最近日本人と結婚して中国からやってきた若い主婦、それに熟年の方まで年齢層は幅広いです。「毎週楽しみにしています」といった内容のファックスが中国語で届きます。新聞配達をしながら日本語学校に通っている就学生が「番組を聴いて励まされます」と便りを送ってきてくれたこともあります。そういうふうに、リスナーとは直接会っているわけではないけれど、電波を通じてつながっているという実感があります。

前川: CO・CO・LOでは日本における生活情報を各国語で伝えておられますが、在日中国人のなかには、長年の在住者と、最近来日されるニューカマーとがいらっしゃるだけに、在日年数などによって情報のニーズも違いますよね。

暁晨: 私は、京都に住んでいるのですが、1999年度の京都市の外国籍市民施策懇話会の委員を務めていました。在日コリアンの委員の方もいらっしゃいましたが、日本での在住歴が長いという立場から、関心を払われている課題は参政権や年金問題などでした。私は、委員としてお手伝いしていたのは、自分もそうですがニューカマーの大きな関心事について意見を述べることでした。すなわち、どうやって住居を確保するかとか、留学生・就学生の学費やアルバイトの問題についてです。ニューカマーにとっては、住居や医療のことなど生活に基本的なことをまずおさえることが大切だと思うのです。だから、CO・CO・LOの各国語放送の生活情報もどちらかといえば、ニューカマーを対象としたテーマが多いです。

前川: 京都では在日外国人の医療について、NGOの活発な取り組みがあると聞いていますが、相談を受けたりすることがありますか。

暁晨: 私は番組とは別に、「多文化共生センターきょうと」が企画した医療通訳ボランティアの研修会の講師を引き受けたことがありますが、そのときニューカマーの中国人の直面している医療の現状が想像していたより深刻であることに気付かされました。3分間診療と言われるほど診療時間が短いため病状がよくわからないまま帰らざるを得ないとか、中国語と日本語の漢字の意味の違いを誤解してしまったりすることもしばしばあるようです。

 その研修会には20人ほどの日本人ボランティアが参加していましたが、中国語のレベルはさまざまでした。医療現場では、専門用語がたくさん使われるし、命にも関わることだけに、質の高い通訳が要求されることを改めて感じました。だから、時間の許す限り、私は医療問題に関してお手伝いしたいです。

前川: 話は変わりますが、中国は広くて地域による違いもバラエティに富んでいると思います。料理についてはどうでしょうか。日本にもいわゆる中華料理はそこら中にありますが。

暁晨: 実は、来日間もない頃、日本人から餃子の作り方を教えてほしいと言われて困ったことがあります。日本で中国人だといえば、誰でも餃子が作れると思われています。確かに北部の人は家庭で作っています。しかし、私の出身地域ではワンタンを家で作る習慣はありますが、餃子は作らずに買って食べるのが普通なのです。だから、あわてて中国の友だちに料理方法を教えてもらい、餃子を作れるようになりました。

 日本には、中華料理のメニューとして天津飯がどこにでもありますが、これには最初驚きました。そんな料理は中国では一度も聞いたことがなかったからです。

 ラーメンは、中国より日本のほうが好きです。日本のラーメンのこってりとしたコクのあるスープの味がいいです。私が中国で印象に残っているラーメンは、学生時代に通ったラーメン屋さんの味です。学生でお金がなかったので、安いラーメンしか食べなかったせいでしょうか、すごくおいしかったという思い出があまりないのです。

前川: シャオチェンさんは、これから日本社会でどういうふうに生活していこうと思っていますか。

暁晨: 私は今年で在日10年目です。当初いろんなカルチャーショックを受けて戸惑っていたときに先輩の中国人やまわりの日本人に助けてもらいました。今度は、私が新しく日本に来る人たちを助けていきたいです。子どもが2歳になったいま、私も日本での定住意識が強くなりました。これまで関心のなかった町内会にも顔を出すようになり、私自身と地域との関わりが徐々に密になってきました。周囲の人に中国のことを知ってもらいたいし、日本でお世話になったことの恩返しもしていきたいです。でもそれは、そんなにおおげさではなく、ひとりの在日中国人としてごく自然体でやっていきたいです。

(構成:藤本 伸樹・ヒューライツ大阪)

FM CO・CO・LO(76.5MHz http://www.cocolo.co.jp
 1995年10月に大阪で開局された日本で初めての多言語(15言語)によるFMラジオ局。生活情報などを届ける国別番組(1週間に1回2時間)や語学講座などの番組が、毎日朝6時から翌朝2時まで放送されている。国別番組の制作には、プログラム・スタッフと呼ばれる外国人スタッフが、日本人スタッフと共同で内容構成や収録、DJなどマルチな役割を担っている。