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国際人権ひろば No.47(2003年01月発行号)
世界の人権教育
東南アジア各国で使える授業案の出版に向けたとりくみ ~東南アジア地域の人権教育レッスンプランづくり
ジェファーソン・R・プランティリア (Jefferson R.Plantilla)
ヒューライツ大阪主任研究員・アジア地域人権教育プログラム担当
■ 「ライトショップ」の成果をもとに
ヒューライツ大阪が推進している東南アジア地域の人権教育のためのレッスンプラン(授業案)づくりのとりくみについては、2001年9月発行の「ヒューライツ大阪ニュースレター」第39号(現「国際人権ひろば」)でもお伝えしてきました。
東南アジア地域の人権教育のためのレッスンプランづくりのワークショップとして01年6月に実施した「東南アジア・ライトショップ」を経て、そこで作成されたレッスンプランの実用化にむけた検討を、02年の中頃から始めました。
「ライトショップ」に参加した6つの国(タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム、カンボジア)の教育関係者で構成される「東南アジア検討チーム」のメンバーは、02年6月20日~22日、タイのバンコクで第一回目の検討会議を行いました。検討チームはこの会議で、レッスンプランの検討にあたっての基本原則やレッスンプランのフォーマット、そして出版物にする際に含めるべき教材・資料を確認しました。
■ どんなレッスンプランにするのか
02年12月11日~13日、第二回目の検討会議が再びバンコクで行われました。そこでは、一回目の会議に引き続いて協議をし、遂に最終的なレッスンプランを形にすることができました。検討チームのメンバーは、「東南アジア・ライトショップ」で採用したレッスンプランのフォーマットをそのまま使うことにしました。また、人権教育カリキュラムの枠組みも決めました。枠組みとは、学校での初等教育と中等教育をそれぞれローレベルとハイレベルに分け、計4段階とするということです。それにより、人権問題・課題のカテゴリー内でレッスンプランを学年ごとにフレキシブルに活用することができるからです。
レッスンプランは以下のような性格を持たせることにしました。
- レッスンプランの一覧から検討チームが取り上げた特定の人権問題・課題に焦点をあてる。「生徒の経験する範囲内の」問題・課題を強調する。
- 東南アジア地域の文脈に応じて適用できるようにする。また、各国それぞれのカリキュラムや教育条件にフレキシブルに適用できるようにする。表現・記述は一般的なものにして、東南アジアのいずれの国でも容易に活用できるようにする。
- それぞれのレッスンプランでは、トピックや関連する人権概念などを説明する注釈を付けておく。
- 一つのレッスンプランは、おおよそ40分から50分ぐらいで完結するようにして、時間を調整できるよう幅をもたせておく。
- できるだけシンプルでわかりやすい言葉を用いる。
- 一つのレッスンプランにつき、焦点をあてる人権テーマは一つだけとする。
- 一つのレッスンプランでは全体的な整合性をもたせる(部分によってねらいが異ならないように)。
なお、初等・中等教育とそれぞれローレベルとハイレベルにおいて、レッスンプランの数はまんべんなく配分して出版物に盛り込むようにします。また、出版物には、汎用性を持たせるため、プランの名前や対象国は伏せて、作成者の一覧のみを巻末に添付します。
■ 現場の教員の苦労を知る
検討チームの第一回目の会議では、初等教育レベルのレッスンプランが検討されましたが、議論のほとんどは、レッスンプランの中で取り上げるべき人権概念の検討に費やされました。
初等・中等教育において共通する経験を想定した適切な人権概念を見いだすという作業は、これまで人権教育に関わってきた検討チームのメンバーにとっても、挑戦(チャレンジ)でした。適切な教材やガイドブックがない中で、教科で人権を教えようと努力している学校の教員の苦労に共感せざるを得ません。
12月に行われた第二回目の検討会議では、中等教育レベルのレッスンプランが検討されました。レッスンプランは03年の5月に出版される予定です。出版された後は、それらを使った教員研修を、03年後半をめどに、ベトナムもしくはカンボジアで行う計画です。
(訳・川本和弘)