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国際人権ひろば No.61(2005年05月発行号)
NEWS IN BRIEF
第61回国連人権委員会における主な決議
第61回国連人権委員会(以下、委員会)が2005年3月14日から4月22日までジュネーブの国連欧州本部で開催された。委員会は53カ国の政府代表で構成されており、様々な人権に関するテーマ、特定の地域の人権状況に関して議論を行い、決議を採択した。採択された主な決議は次の通り。
人種主義に関して
委員会は人種主義などを煽る特定の行動に対して懸念を表明する決議を採択した。世界各地でネオ・ナチなどの人種差別的な政党や集団が事件を起こしていることをあげ、ナチスの美化や人種主義的な行動を阻止する措置をとる必要性を強調した。
特定国の人権状況
朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の人権状況について、拷問や公開処刑、移動・信仰・表現などの自由の制限など同国の深刻な人権侵害について懸念を表明し、同国政府に対し直ちに制度的な人権侵害を廃止し、国際的な労働基準の遵守、拉致問題の早急で明快な解決、特別報告者および国連人権高等弁務官事務所、他の国際諸機関と協力することなどを勧告する決議を採択した。また、北朝鮮の人権状況に関する特別報告者の任期を1年延長した。
このほか、特定国に対する決議として、ミャンマー、キューバ、ベラルーシに対しても決議が採択されている。一方、特定国の人権状況に関する決議は人権を協議する場に政治を持ち込むものだという非難も表明された。
人権侵害の被害者の救済
委員会は、国際人権法の深刻な侵害、および国際人道法の重大な侵害の被害者に対する救済および補償に関する基本原則およびガイドラインに関する決議を賛成40、棄権13で採択した。この原則は、各国にそれぞれが拘束される国際人権法および人道法を尊重および尊重を確保、実施し、侵害防止の立法、行政などの措置をとるよう求めている。それには、そのような侵害を調査し、十分な証拠がある場合は責任者を訴追し、処罰することが含まれる。また、司法への平等で実効的なアクセス、十分で実効的な補償、侵害や補償の制度に関する情報へのアクセス、尊厳の尊重、家族を含めた安全やプライバシー保護の確保などが含まれる。
人権教育
05年1月に開始した「人権教育のための世界プログラム」について、委員会はその開始を歓迎し、国連総会の今会期(59会期)中、遅くとも05年中に「プログラム」第1段階の改訂行動計画案を採択するよう奨励した。第1段階は初等・中等教育に焦点を当てることが04年12月の総会決議で決められたが、人権高等弁務官事務所とユネスコが世界中の専門家と協議して作成した行動計画案が総会に提出され、各国の意見をとり入れ改訂されたが、4月末現在、まだ採択されていない。
企業と人権
多国籍企業をはじめとする企業と人権について、委員会は事務総長に対し2年間の任期で独立専門家を任命することを求める決議を採択した。この専門家は企業の人権に関する責任の基準を明らかにし、多国籍企業を規制する国家の役割を検討し、企業活動による影響の評価方法などを模索し、第62および63会期に報告する予定である。
新たな専門家や特別報告者の任命
今会期には、他にも新たに独立専門家および特別報告者の任命が決議された(1)人権と国際的な連帯に関する独立専門家は、この問題を調査し、人民の国際的な連帯に対する権利に関する宣言を起草する作業を担う。(2)少数者(マイノリティ)の問題に関する独立専門家は、1992年に採択された「国民的または種族的、宗教的及び言語的少数者に属するものの権利に関する宣言」(マイノリティの権利宣言)の実施促進などを行う。(3)また、テロリズムに対抗する際の人権と基本的自由の保護と伸長に関して提言を行い、ベスト・プラクティスについて報告するよう、特別報告者を任命した。(4)一方、スーダンの人権状況に関する決議において、人権委員会は継続するダルフール地方における人権侵害を非難し、紛争当事者に早急に停戦し、人道援助のアクセス、難民や避難民の帰還の安全確保などを求め、同国の人権状況をモニターする特別報告者の任命を決めた。
人権小委員会
人権の促進と保護に関する小委員会(人権小委員会)について、性的暴力の犯罪、経済的、社会的および文化的権利における非差別、職業と世系に基づく差別に関する特別報告者の任命を決定した。職業と世系に基づく差別に関しては、同委員会の横田洋三委員と鄭鎮星委員が任命されている。
国連改革-人権委員会の廃止案も浮上
今会期中、アナン国連事務総長は国連改革に関する報告を公表したが、「一層大きな自由の中で」と題したミレニアム宣言実施に向けた報告と勧告で、国連の総会、安全保障理事会などの機構・手続の改革案を提示している。その中には、人権委員会を廃止し、より小規模で常設の人権理事会を設置するという案が含まれている。報告は、現在の人権委員会には、人権を保護する目的ではなく、自国への批判を回避するために、または他国を批判するために委員会のメンバーになる国があり、委員会の信用を損なっているとした。事務総長は05年9月にはじまる総会でこれら提案について審議・決議が行われることを求めている。
アルブール人権高等弁務官も、会期最終日の発言の中で、特定国が審議の対象になるかどうかが政治的な勝利や敗北とみなされ、世界の各地の人権侵害の問題が4カ国を取りあげるだけで終わる制度には基本的な問題があると指摘している。
(翻訳・構成 ヒューライツ大阪 岡田仁子)
出典:
国連人権高等弁務官事務所(英語)
61会期人権委員会(英語)