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国際人権ひろば No.71(2007年01月発行号)
NEWS IN BRIEF
第61回国連総会の概要
06年9月に第61回総会が始まった。9月14~15日には、閣僚級が出席した移民と開発に関するハイレベル会合などが開催されたほか、10月13日には07年からの新しい国連事務総長として潘基文・韓国外交通商大臣を選出した。
人権に関する主な動きは、以下のとおり。
■障害者権利条約の採択
総会は2001年の決議によって設置された障害者権利条約に関する特別委員会が起草し、12月5日に採択した条約および選択議定書案を12月13日、コンセンサスで採択した。
条約は、障害をもつ人の尊厳、自己決定権を含む自立を尊重し、十分で実効的な社会への参画などをうたい、非差別、機会の平等、アクセシビリティ、男女の平等、子どもの権利などを基本原則に掲げている。締約国は障害に基づくあらゆる差別を禁止し、平等確保のために障害をもつ人に対する合理的配慮が提供されるよう確保するあらゆる適切な措置をとることを義務づけられる。そのほか、生命の権利、身体の自由、司法へのアクセス、地域社会での自立生活の権利、最大限可能な自立を伴う移動の自由などが含まれる。
また、公衆に向けられる情報を、障害をもつ人に対して追加のコストなく、利用可能な適切な形式や技術で提供することや、点字、手話や他のあらゆるコミュニケーション手段や形式の利用を認め、促進すること、教育の権利については、障害をもつ人の潜在可能性、人格などの十分な発達、十分な社会参画に向けて、生涯教育を含めあらゆる段階でのインクルーシブな教育制度を確保することなどが求められる。
条約は実施機関として締約国の条約実施に関する報告を審議する障害者の権利委員会の設置を規定する。それとは別に、締約国の国内に条約の実施に関する政策など調整する機関、および実施の進捗状況をモニターする独立した機関をその国内の司法、または行政制度の中で特定、または設置することを求める。条約は2007年3月30日に署名・批准に開放され、20カ国の批准により発効する。
■強制失踪からの保護に関する条約
6月に開催の第1回人権理事会で採択された強制失踪からの保護に関する条約が12月20日、採択された。この条約では、締約国に強制失踪を犯罪とし、そのような行為を捜査し、責任者を訴追、処罰する義務を課す。また強制失踪が広範、制度的に行われることは人道に対する罪であるとして、国際法上の責任も生じるとする。また、締約国が条約実施にあたってとった措置などについて作成する報告を審議する10名の専門家によって構成される委員会の設置も規定されている。委員会は、さらに強制失踪した人を捜索する要請を受け、当該締約国に期限を付けて情報を求めることができる。この条約は署名、批准に開放され、20カ国の批准をもって発効する。
■北朝鮮、ミャンマー、ベラルーシ、イランの人権状況に関する決議
12月19日、国別の人権状況について、北朝鮮、ベラルーシ、イランの人権状況に関する決議が採択された。北朝鮮の人権状況について、総会は拷問、公開処刑、送還された難民の処遇、表現、思想、結社などの自由の厳しい制限、他国の人の拉致などについて懸念を表明し、北朝鮮政府に対して、総会などの決議で求められた措置や条約機関などの勧告を実施し、北朝鮮の人権に関する特別報告者と協力するよう強く促した。
イラン、ベラルーシの人権状況に関する決議は審議・採決を行わないノーアクション動議案が提出されたが、いずれも否決され、決議が採択された。
また、12月22日、ミャンマーの人権状況に関し、拷問やアウンサンスーチー国民民主連盟総書記ほか多数の政治的な拘禁、子ども兵士の徴用、児童労働や強制労働など制度的な人権侵害の継続や、民主化に向けて一向に前進が見られないことについて懸念を示し、政治犯の釈放、民族的少数者の非戦闘員に対する軍事行動の停止、子どもの保護やILOの国際労働基準の遵守などを求め、ILO、特別報告者、国連および他の人道機関と協力し、アクセスを妨げないよう呼びかける決議を採択した。
■ダーバン会議・フォローアップに関する決議
総会は12月19日、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連する不寛容の完全な撤廃に向けたグローバルな努力ならびにダーバン宣言および行動計画に関するフォローアップに関する決議を採択した。それにより、2001年の反人種主義・差別撤廃世界会議で採択されたダーバン宣言および行動計画の実施状況を審議するレビュー会議が2009年に開催されることが決まった。そのために人権理事会に2007年中にその会議を準備するよう求めている。
決議はその他、基本原則として各国政府に人種主義、人種差別などの防止に関する措置の実施などを求め、ダーバン宣言・行動計画のフォローアップとして、行動計画にあげられていた国内行動計画をまだ策定していない政府に対して、早急に策定するよう求めている。
■先住民族の権利宣言案の採択は繰越し
強制失踪からの保護に関する条約と同じく、第1回人権理事会で採択された先住民族の権利宣言案について総会は、さらに協議を行うために、審議・採択を延期し、61会期末までに審議を終えると決議した。