人として♥人とともに
2015年に国連総会で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)は、飢餓の削減を最重要目標として2015年まで実施されたMDGs(ミレニアム開発目標)と異なり、行政機関やNGOだけでなく、企業からも高い関心が寄せられています。JICA関西や経済産業省近畿経済産業局が事務局を務める「関西SDGsプラットフォーム」の運営委員には、大学、NGOと並び、関西経済連合会や大阪商工会議所等、関西の主要な経済団体が名前を連ねています。SDGsに関連づけて、世界の課題への貢献を強調する企業もたくさんあります。SDGsに対する関心が高まるのは望ましいことですが、場合によっては、自社、自組織に関係する部分のみを抜き出してSDGsへの貢献を打ち出している場合も見受けられるようです。
SDGsは、17の目標と169のターゲットから成る2030年までに国際社会が解決すべき課題のカタログです。前文で「誰一人取り残さないことを誓う」と謳っていることからも明らかなように、SDGsの核には人権があります。前文は、「(目標とターゲットは)すべての人々の人権を実現し、ジェンダー平等とすべての女性と女児の能力強化を達成することを目指す」とも述べており、人権とジェンダー・女性の視点が明確に示されています。
SDGsについて、国連は、2018年6月に「2018年SDGs報告(注」と題する事務総長報告を発表しました。同報告から、直接、人権に関係するデータをいくつか紹介しましょう。
まず、進展と呼べるデータには以下のものがあります。
一方で、まだまだ課題は残っています。
今回の報告を読むと、「誰一人取り残さずに」SDGsを達成することがいかに難しいかも改めて痛感します。開発と環境は、既に長年にわたり、どのように両者を両立させるかが最大の難問でした。そして、その両方が人権に深く関わっています。また、誰一人取り残さず人権を保障するには、不可視化されがちな人、周縁化された人たちへの視点が欠かせません。複数のアイデンティティが交差する形で複合的な差別や排除を被っている人たちの人権を保障する道筋を考えることも重要な課題です。
グテーレス事務総長が事務総長報告前文の冒頭で述べているように「SDGsは人々と地球の尊厳と平和と繁栄のための計画」ですが、「人々」という言葉が真に「一人ひとり」の集合体であるように注意深く取り組む必要があります。
注:The Sustainable Development Goals Report 2018(2018) United Nations