人として♥人とともに
6月の28日から29日にかけて、大阪で2019年のG20サミットが開催されました。G20は、20の国と地域から構成されるグループですが、参加各国のGDPをあわせると世界全体のGDPの8割を超えます。G20の議論と決定が、いかに世界の経済と社会に大きな影響を及ぼすかがおわかりいただけるでしょう。
『国際人権ひろば』の5月号でもご紹介しましたが、近年、G20やG7には、エンゲージメント・グループと呼ばれるグループが設置され、市民、労働者、女性、若者、経済界、研究者等の声を届けることがおこなわれています。これらのグループの議論と活動は、G20やG7の公式プロセスの一環として位置づけられています。
ヒューライツ大阪は、市民社会の声を反映させるためのグループであるC20(Civil 20)サミットの日本での開催に向け、その実施主体として設立された「2019 G20サミット市民社会プラットフォーム」に幹事団体ならびに共同代表として参加し、4月21日から23日まで3日間にわたって開催されたC20サミットでは共同議長を務めました。
今回のC20では、以下に挙げる10のワーキング・グループに分かれて政策提言書(Policy Pack)注を作成しました。
「反腐敗」「教育」「環境・気候・エネルギー」「ジェンダー」「国際保健」「インフラストラクチャー」「国際財政構造」「労働・ビジネスと人権」「地域から世界へ」「貿易・投資」
また、2019年1月のダボス会議において、安倍首相が、G20大阪サミットの主要議題の一つとしてデータ・ガバナンスやデジタル経済を挙げたことを受けて、C20にもデジタル経済タスクグループが設置され、「デジタル経済」に関する提言が作成されました。提言作成にあたり、ヒューライツ大阪は、各ワーキング・グループの提言に、ジェンダー課題を始めとする人権課題が盛り込まれるよう努力しました。
政策提言書の冒頭に置かれているのが、政策提言書全体の主張と方向性を提示するコミュニケ(声明)です。著しい格差の存在、気候変動に代表される環境問題、ジェンダー不平等、不安定で不公正な雇用の増大といった現在の世界に存在する重大な課題を挙げたうえで、コミュニケが強調しているのは、以下の4点になります。
人権の観点からは、1点目と並び、4点目が特に重要な意味をもちます。ヒューライツ大阪は、草案段階の「しばしば周縁化され、最も声が届きにくく可視化しにくい人たち」という表現について、できるだけ具体的に対象となる人たちを列挙すべきだと主張し、以下のような文章を提案し承認されました。
「女性、LGBTQI、障害者、先住民、世系に基づく社会グループ、民族的・言語的・宗教的マイノリティ、難民と国内避難民、移住者、高齢者など、しばしば周縁化され、最も声が届きにくく可視化しにくい人たちが、市民社会組織(CSO)とともに自分たちの課題を主張でき、政府に説明責任を求める力を身につけられるようになるべきである。」
この文章を提案した背景には、「誰ひとり取り残さない」という表現では、往々にして忘れられてしまう人たちが存在するという理解があります。また、「世系に基づく社会グループ」という表現を入れることができたことも重要な成果だと認識しています。
今回のC20にあたっては、共同議長として、以下の3つを大切にしようと呼びかけてきました。
G20のプロセスは、6月のサミットで終わるわけではなく、日本は2019年の1年間を通じてホスト国としての役割を果たすことになります。市民社会スペースの縮小という、人権と民主主義を脅かす状況の拡がりが世界的に懸念されるなか、上記の3点を大切に、誰もが大切にされ人権が保障される社会をつくるための議論に貢献できるよう働きかけていきます。
注:政策提言書は以下のウェブサイトからダウンロードが可能です。https://civil-20.jp