人として♥人とともに
『国際人権ひろば』136号、141号のこのコラムでも取り上げましたが、2030年の地球のあるべき姿を国際目標として掲げたSDGs(持続可能な開発目標)は、「誰ひとり取り残さない」ことを中心理念としています。「誰ひとり取り残さない」ためには、様々な理由で不可視化されがちな人たち、声を上げにくい人たちへの視点が大切です。そのためには人権の保障が不可欠です。
2016年にSDGsの実施が始まってから、既に4年が過ぎました。目標年まで後10年。国連は、2020年から2030年までの10年間を「国連行動の10年」としています。2019年9月にニューヨークで開催されたSDGサミットでは、グテーレス国連事務総長が「今、行動を起こさないとSDGsの達成は不可能」とのメッセージを発表しました。
17の目標、169のターゲット、232の指標から成り立っているSDGsですが、それぞれの目標が、どのように具体的に人権と関係しているのかについて、このコラムで紹介していきたいと思います。第1回目の今回は、2020年が1995年に北京で開催された第4回世界女性会議から25年の記念の年であることもあり、目標5「ジェンダー平等を実現する」を取り上げます。
目標5「ジェンダー平等を実現する」が、人権の視点から特に重要なのは、それが人口の半分を占める女性に関係しているからです。そして、残念ながら、現在、世界でジェンダー平等を実現している国はありません。
目標5は以下の6つの具体的ターゲットから構成されています。
そして、これらを実現するための実施手段として、「財産や資源への権利とアクセスの保障」「技術の活用の強化」「適正な政策と拘束力のある法規の導入」をターゲットに挙げています。
国連は「持続可能な開発目標報告2019」のなかで、目標5には多くの課題が残っているとし、ターゲットの進捗状況について以下のように報告しています。
ジェンダー平等が分野横断的課題であることも重要です。他の16の目標すべてにジェンダー課題が関係しています。では、どうして目標5があるのでしょう。実は、SDGsの策定過程では、「ジェンダーだけを個別に取り上げた目標をつくるか」あるいは「あらゆる分野にジェンダー課題を盛り込むか」について熱い議論が展開されました。「独立した目標を設定すると同時に他のあらゆる分野にジェンダー課題を盛り込む」という結論に落ちついたわけですが、それにより「問題を可視化する」「構造的原因に働きかける」「ジェンダー平等を他の目標実現に結びつける」ことが目指されています。
日本は、最新のジェンダーギャップ指数で、また順位を下げました。この背景には、世界で起こっている変化が日本では起こっていないことがあります。政治分野におけるクオータ制の導入等を通じた意思決定への男女の平等な参加、長時間労働の解決とディーセントワークを通じた仕事と生活の両立は、そのための最重要課題です。2019年末に改定された政府のSDGs実施指針では、優先課題に「ジェンダー平等の実現」が新たに加わり、ジェンダーの視点の主流化が明記されました。この方針をしっかり実施していくことが必要です。ジェンダー視点には、女性の問題だけではなく、社会全体を変革する力があります。
United Nations (2019) The Sustainable Development Goals Report 2019.