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2021年は、11月に英国グラスゴーで国連気候変動枠組条約の第26回締約国会議(COP26)が開催されます。今回のCOP26には、2015年のCOP21で採択された「パリ協定」の目標である「世界の平均気温の上昇を産業革命前と比較して1.5度未満に抑え、今世紀後半に脱炭素化を達成する」ため、各国の目標を見直すという重要なミッションがあります。
COP26に先立ち、8月9日に公表された国連の気候変動政府間パネル(IPCC)報告は、「人間の活動が温暖化の原因である」と断定し、現在の状況を「前例がない危機的な状況」と表現しました。今を逃せば二度と地球環境は持続可能性を回復することができないと警鐘を鳴らす研究者もいます。IPCC報告は、「気温上昇を1.5度に抑えたとしても前例のない異常気象現象が発生する頻度が増す」とし、CO2排出量を大幅に削減しなければ、気温上昇は21世紀中に2度を超えると警告しています。持続可能なクリーンエネルギーの迅速かつ大規模な普及等が喫緊の課題です。
日本に暮らす私たちの生活も、耐えがたい猛暑、記録的豪雨による水害、時期もコースも予想がつかない巨大台風による甚大な被害等に悩まされるようになりました。災害は、これまでも、より脆弱な人たちに対し深刻な被害を及ぼしてきましたが、それが悪化すると同時に激甚化しており、人々の生きる権利と生活を脅かしています。
目標13には、以下の3つの具体的なターゲットがあります。
世界的に注目されるようになっている課題として「気候変動とジェンダー」があります。11月のCOP26に向けても、多くの国際機関やNGOが、この問題への対応を呼びかけています。とは言え、日本で暮らしていると、気候変動がどのようにジェンダーに関係するのか想像できない人が多いのではないでしょうか。
気候変動が引き起こしている問題の1つに水へのアクセス悪化が挙げられます。上水設備が普及し、蛇口をひねればいつでも水が手に入る日本と異なり、世界の22億人は安全な飲料水が手に入る環境にありません。成人の体重の約60%は水分であり、脱水症状は命を奪います。水の確保は重要な人権の1つです。
世界の多くの場所で、家族が使う水を確保するのは女性の仕事ですが、水源の枯渇や干ばつにより、これまで以上に長い距離を歩かないといけない女性が増えています。ネパールで女性たちが使う水瓶に入る水は約20リットル。日本のコンビニで売られている2リットル入りのペットボトル10本分になります。水瓶を使ってワークショップをやったことがありますが、20リットルの水を入れると頭に載せることはおろか、抱え上げることさえ私たちには困難です。女性一人で十分な量の水を手に入れられない場合には子どもが手伝うことになりますが、その際には女の子が手伝うことが多く、結果的に就学機会が奪われることになります。気候変動がもたらす水不足は女性と少女の人権に多大な影響を与えます。
目標13は、化石燃料への依存を始めとする気候変動に関わる複合的な要因に統合的に対応することが必要な課題ですが、気候変動とジェンダーの問題に目を向けると、目標13が他のいくつもの目標と密接に関係していることにも気がついていただけると思います。それらは全て人権と分かちがたく関連しています。女性の過重な労働負担につながっているという点で目標5(ジェンダー平等)、安全な水の確保という点で目標6(安全な水とトイレ)、少女の就学機会の保障という意味で目標4(教育)、そして安全な飲料水の不足という点で目標3(健康)にダイレクトに関係します。さらに、水が様々な紛争の原因になってきた歴史的な背景を考えると目標16(平和と公正)に、さらに目標7(クリーンなエネルギー)、目標11(住み続けられるまちづくり)、目標14(海の豊かさ)、目標15(陸の豊かさ)とも関連します。
気候変動という課題においても、女性と少女を始めとする社会的に脆弱で周縁化されがちなグループがより深刻な影響を被ることに留意し、誰一人取り残さない対策が必要不可欠です。