人として♥人とともに
2022年2月24日にロシアがウクライナへの侵攻を開始してから1ヵ月半。この原稿を書いている4月上旬時点で、停戦への見通しは立っていません。3月30日に国連人権理事会第49会期でおこなったスピーチで、バチェレ人権高等弁務官はウクライナにおける人権と人道の危機を訴えました。そして、ウクライナに駐在する「国連ウクライナ人権監視団」が以下を確認したと述べました(数字はいずれも3月30日時点)。
この後、4月に入り、ブチャや他の都市で、言葉を失う残虐行為がおこなわれたことが次々に明らかになっています。
今回の危機では、国連を中心とする国際的な安全保障体制の脆弱性が改めて白日の下にさらされています。国連憲章は第2条3項で「すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危くしないように解決しなければならない」と規定します。そのための主要機関である安全保障理事会は常任理事国5カ国に強大な権力を付与していますが、それらの超大国は核兵器を含む武器・兵器の削減に十分に取り組んできていません。核兵器禁止条約には常任理事国5カ国は参加していません。残念ながら日本も。SDGsには目標16「平和と公正をすべての人に」がありますが、武力紛争根絶の観点は弱く、兵器、特に核兵器廃絶については全く触れていません。今回の危機を契機として、武力による紛争解決根絶への気運が生まれることを願います。暴力による問題解決そのものを問題としない限り、今回のような危機は終わらないのではないかとも感じさせられます。軍事産業も深く関わっている問題です。
日本政府はウクライナからの「避難民」受け入れを表明し、首相特使としてポーランドを訪問した林外相が4月5日に20人の「避難民」と一緒に帰国しました。「難民」の定義にあてはまる人たちをあえて「避難民」と表現する背景には、長年にわたって続いてきた難民受け入れに対する日本政府の消極的な姿勢があります。日本は難民条約の締約国であり、本来なら「難民」として受け入れるべき人たちでしょう。今回の危機を通じ、難民問題への意識が高まり、日本政府の難民対応が変わることを願います。アフガニスタンで、ミャンマーで、そして世界各地で、難民問題は、これまでもずっと深刻な問題でした。
テレビ報道で接したなかで、最も心を打たれたのはウクライナの保育園の保育士さんの次のような言葉です。
「勝つか負けるかなんて、どっちでもいい。目の前の子どもたちが泣かずに笑顔で過ごせるなら。」
この言葉が武力紛争の無意味さを伝える言葉として世界に、何より武力で問題を解決することを躊躇しない政治のリーダーに届き、一日も早く今回の軍事侵攻が終結することを願います。武力紛争は人権にとって最大かつ最悪の脅威です。
参考:https://www.ohchr.org/en/statements/2022/03/update-human-rights-council-ukraine