人として♥人とともに
「持続可能な開発報告書2022」によれば、多くの国で達成度指数がコロナ禍発生前の数値を下回っている目標として目標1「貧困をなくそう」と目標8「働きがいも経済成長も」があります。今回は目標8を人権の視点で読み解きます。
目標8には、以下の10の具体的なターゲットがあります。
この記事を準備している過程で、SDGsの外務省仮訳には2種類があることに気づきました。5の最後について、「同一労働同一賃金」と「同一価値の労働についての同一賃金」の二通りの記述が存在するのです。原文(equal pay for work of equal value)を正確に訳すと後者、すなわち「同一価値の労働についての同一賃金」になります。経済学者の大沢真理さんから「同一労働同一賃金」は誤訳であると教えていただいたことをきっかけに気づくことができました。修正訳があるにもかかわらず現在も誤訳がアップされているという由々しき状況があります。
今号の特集との関連では、「障害者の完全かつ生産的な雇用及び働きがいがある人間らしい仕事」に関する日本の課題についても指摘する必要があります。障害者雇用促進法では企業の障害者法定雇用率を2.3%と定め、達成しない企業は労働局から罰金を科され、対応を怠る場合は企業名を公表されます。厚労省によると2021年に法定雇用率を達成した企業の割合は47%でした。法定雇用に関しては、法定雇用率の達成を企業に請け負うコンサルタント業者の存在が指摘されています。実際には当該企業の事業とは関係のない業務に障害者を従事させ法定雇用であるかのように見せかけるビジネスであり法の趣旨とは相容れません。
移住労働者や外国人労働者との関連では、技能実習生の人権問題に目を向ける必要があります。農業も工業もサービス業も外国人の労働力のおかげで成り立っている現状があります。技能実習制度そのものを見直し、外国人労働者の人権を保障する制度の導入を検討するべきではないでしょうか。
長時間労働、低い生産性、第一子出産時に今でも女性の5割が離職するといった日本の労働環境に関する課題解決も不可欠です。高度経済成長を支えた意識から脱却し、「誰一人取り残さずに」、「働きがいがある人間らしい仕事」そして「すべての労働者の権利保護と安心・安全な労働環境」を実現するために、OECD(経済協力開発機構)のウェルビーイング指標(幸福度)等も参考に、ケアワークの平等な分担を含め、何に基づいて経済と社会の豊かさ、そして幸福を評価するかを問い直し、大胆な変革をおこなう必要があります。
[参考]