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委員会の一般的勧告

人種差別撤廃委員会
一般的勧告23 (1997)
先住民族に関する一般的勧告

1997年8月18日第41会期第1235会合にて採択
CERD/C/51/Misc.13/Rev.3

  1. 人種差別撤廃委員会の業務、とりわけ「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」(以下、「人種差別撤廃条約」)9条にもとづく締約国の報告書の審査において、先住民族の状況はつねに高い注目と関心の対象となってきた。この点、委員会は先住民族に対する差別が本条約の対象範囲に含まれるものであり、そのような差別と闘いこれを撤廃するためにすべての適切な措置がとられなくてはならないと一貫して確認してきた。
  2. 委員会は、1994年12月10日から開始されて「世界の先住民の国際10年」を総会が宣言したことに留意し、「人種差別撤廃条約」の規定が先住民族にも適用されることを再確認する。
  3. 委員会は、世界の多くの地域において、先住民族がこれまでも、そしていまもなお差別され、人権と基本的な自由を奪われ、とりわけ彼(女)らが自らの土地と資源を入植者、民間企業および国営企業により失ってきた事実を認識している。したがって、先住民族の文化、自らの歴史的アイデンティティの保持はこれまでも、そしていまもなお危機にさらされている。
  4. 委員会は、締約国に対してとくに以下の要請を行う:
    1. 先住民族の固有の文化、歴史、言語、および生活様式が、国家の文化的アイデンティティをより豊かにすることを認識かつ尊重し、その保持を促進すること
    2. 先住民族の構成員がその尊厳と権利において自由かつ平等であること、とりわけ先住民族としての出自やアイデンティティにもとづく差別から自由であることを確保すること
    3. 先住民族に対して、自らの文化的特徴と両立しうる持続可能な経済および社会発展が可能な条件を提供すること
    4. 先住民族の構成員が公的生活への実効的な参加について平等の権利をもち、自らの権利や利益に直接関連する決定が、十分な情報にもとづいた合意なくして行われないことを確保すること、
    5. 先住民族の共同体が、自らの文化的伝統や慣習を実践、再活性化し、また、自らの言語を保持、実践する権利を行使できることを確保すること
  5. 委員会は、締約国に対し、先住民族が自らの共有地、領土および資源を所有、開発、管理および利用する権利を認め、保護し、また彼らが伝統的に所有もしくは居住、利用していた土地または領土が、自由で十分な情報にもとづいた合意なく奪われた場合は、それらの土地もしくは領土を返還する措置をとるようとくに要請する。これが事実上不可能な場合にかぎり、現状回復の権利は正当で公平かつ速やかな補償の権利に差し替えられるべきである。この補償は、できるかぎり土地もしくは領土という形態をとるべきである。
  6. 委員会は、さらに、自らの領土内に先住民族が存在する締約国は、本条約のすべての関連規定を考慮しつつ、定期報告書にそれらの民族の状況に関する十分な情報を含めるよう要請する。

(翻訳:上村英明/明治学院大学国際平和研究所・市民外交センター)
『アジア・太平洋人権レビュー1998』より転載